こんにちは。ヤマザキです。
今回は、『シュレディンガーズ・コール』のクリア後の評価・感想・レビューになります。
この記事では本作の良いところや気になったところなど、率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。
- 情緒的で、心に深く突き刺さる「泣ける」物語を求めている方
- 音やビジュアルの雰囲気にどっぷりと浸りたい「雰囲気ゲー」が好きな方
- ゲームだからこそできる「体験」や「没理入感」を重視する方
はじめに
『シュレディンガーズ・コール』は、2026年5月28日に集英社ゲームズより発売されたアドベンチャーゲームです。開発はアクロバティックチリメンジャコが手掛けています。
BitSummitでも大々的に宣伝されていた本作。舞台は、人類の歴史が終わりを迎える瞬間の世界です。
プレイヤーは記憶を失った少女「メアリ」となり、死にきれない想いを抱えた人々の「世界最後の話し相手」として黒電話を通じ、彼らの心残りに寄り添っていくことになります。
実際に最後までプレイしましたが、結論から言えば、
「ゲームという媒体でしか成し得ない、究極の感情移入。あまりに切なく、あまりに優しい『最後』の物語であり、圧倒的な演出と涙なしでは見られない極上の感情体験が待っている大ダークホース作品」でした。
正直、プレイ前はこれほどまでに泣かされるとは思っていませんでした。重く切ないテーマ性、そしてプレイヤーの心を直接揺さぶってくる「ゲームならではの仕掛け」について、詳しく語っていきます。
『シュレディンガーズ・コール』の魅力
まずは、本作の核となる物語の素晴らしさから紹介していきます。
その1:死にゆく者の「後悔」に寄り添う、あまりに切ない物語

本作のコンセプトは「世界最後の話し相手」です。
舞台は、巨大な月が落ちてきて、人類の歴史が終わるほんの少し前の世界。
主人公のメアリが電話を繋ぐ相手は、すでに死の淵におり、「このままでは死にきれない」という強い未練を抱えて生と死の狭間で彷徨う魂たちです。
そんな魂たちの心残りに寄り添い、彼らを安らかに救っていくことが本作のメインストーリーとなります。
魂を救う「未確定電話」という存在

物語の核心となるのが、「未確定電話」という要素です。
これは、世界が終わるその瞬間にかけられていた電話のこと。突然の終焉によって会話が途切れてしまい、「最後に伝えたかった言葉」が宙に浮いたままになっています。
プレイヤーは、過去の通話記録や遺された情報を頼りに、彼らが何を伝えたかったのかを解き明かしていくことになります。
「話し相手」としてのゲーム体験

本作はテキストベースで進行する、ポイント&クリック方式のアドベンチャーです。
まずは電話帳にある番号へ「黒電話」から実際にダイヤルを回してかけ、情報を集めます。集めた情報はメアリが「手帳」に書き留めていき、そのメモを会話の中で提示することで真相に近づいていく仕組みです。
あくまで「電話越しの話し相手」というスタンスを崩さず、対話を通じて相手の心を解きほぐしていく過程は、非常に独特な没入感がありました。
変えられない過去と、向き合う勇気

本作の素晴らしくも過酷な点は、「過去を変えて救ってあげる」わけではないことです。
母親が息子に隠し通した真実や、親友へ伝えられなかった「ありがとう」。
一度起きてしまった過去は変えられません。メアリにできるのは、電話を通じて彼らの後悔を聞き、共に考え、最期に納得して「さようなら」を言えるように手伝うことだけです。
一つ一つのエピソードは本当に重く、中には過酷で救いのない真実もあります。しかし、メアリ自身も記憶を失い、誰にも言えない「傷」を抱えているからこそ、プレイヤーも彼女に深く感情移入し、相手の痛みを自分のことのように感じてしまう。
この、痛みを共有する者同士が電話越しに寄り添い合う優しさは、他のゲームでは味わえないほどの牽引力を持っていました。メアリ自身の過去とその行く末についても、ぜひ最後までその目で見届けてほしいポイントです。
その2:絵本のような美しさと、心を揺さぶる「音」の芸術性
本作の没入感を支えているのは、細部まで徹底的にこだわり抜かれた「音」の演出と、幻想的なビジュアル表現です。
絵本のように美しく、儚い色彩のビジュアル

本作の画面は、まるで美しい絵本を一枚ずつめくっているかのような、独特の温かみと儚さがあります。
「世界の終わり」という重いテーマを描きながらも、その色彩感覚はどこか幻想的で、穏やかな静寂を感じさせます。また、劇中でメアリが情報を整理する「手帳」も、挿絵を含めて非常に細かく描き込まれており、ゲーム全体が一つのアート作品であるかのような統一感がありました。この「絵本を読み進めている感覚」そのものが、本作の大きな魅力になっています。
世界の終わりを告げる「ノイズ」の衝撃

本作は、音の使い方の「緩急」が非常に鮮烈です。
例えば、「世界に月が落ちた瞬間」に、それまでの穏やかな空気感がテレビのノイズのように一瞬でブツリと途絶える表現。静かな世界観とのギャップには思わず息を呑みました。
衝撃や盛り上がりを、音のボリュームや密度の変化だけで完璧に再現しており、プレイヤーの「体験」が音によって何倍にも増幅される感覚がありました。
あえて「合成音声」が選ばれた意味

本作のキャラクターの声は「合成音声」で表現されています。
正直、フルボイスならそれはそれでよかったのかもしれませんが、ボイスがないことによって、プレイヤーは「純粋にBGMを聴きながらテキストを読む」という体験に没頭できます。
名作『ファタモルガーナの館』などもそうですが、ボイスを抑えることで、かえって音楽の主張や物語の空気が際立つん印象です。少し不自然で無機質な語り口が、かえって「この世のものではない存在」と話しているような不気味さと美しさを生んでおり、唯一無二の雰囲気を確立していました。
感情を爆発させる「音楽」の力

本作はゲーム冒頭でヘッドホン(イヤホン)の着用を推奨されますが、プレイを終えればその理由が痛いほど分かります。
静かな探索シーンから、クライマックスに流れ出す音楽の力は凄まじく、メアリが紡ぐ言葉と重なった瞬間、私は我慢できずに泣いてしまいました。最高の音楽と演出が、物語の切なさを何倍にも増幅させて届けてくれる……その圧倒的な共感性の高さこそ、本作の真髄だと感じました。
その3:インタラクティブなゲームとして「体験」させる凄み

本作をプレイして最も感銘を受けたのは、物語の「見せ方」ではなく、プレイヤーへの「体験のさせ方」の巧みさです。
そもそもゲームとは、アニメや小説と異なり、プレイヤー自身の操作が物語に介入する「インタラクティブ(双方向)なメディア」です。本作はテキストアドベンチャーですし、エンディングが分岐するタイプではありませんが、「プレイヤー自身にその操作をさせる意味」が徹底的に考え抜かれています。
黒電話というデバイスを通じた「繋がり」の表現

まず、物語の主役である「黒電話」の扱いが実に見事です。
手帳を見て番号を覚え、実際にダイヤルを回して電話をかける。受話器越しに混ざるノイズや、コントローラーから伝わる繊細な振動。これらの演出が、画面の向こう側にいる誰かと「今、本当に繋がっている」という感覚を、単なるテキスト以上の「体験」として最適化しています。
面白いのは、「電話に出る」「電話を切る」といった何気ない動作も、あえてプレイヤー自身に操作させる点です。投げかける言葉も、プレイヤーが「こう言いたい」と思うタイミングで、最高の演出とともに選択肢が出てくる。だからこそ、無意識のうちに物語にのめり込んでしまう魔力がありました。
主人公「メアリ」とプレイヤーの絶妙な距離感

多くのゲームでは、主人公はプレイヤーの分身であり、同じ感情を抱くことで没入感を高めます。本作も基本的にはメアリの悲しみに共感しながら進んでいくのですが、終盤、あえて「メアリとプレイヤーの感情の乖離」を見せる場面があります。
プレイヤーが「こう選ぶべきだ」と思っても、メアリ自身の過去や思い込みが原因で、その選択肢が出てこない。この「自分であって自分でない」という感覚を突きつけられることで、かえってメアリという一人の少女の存在が浮き彫りになり、より深く彼女の心に触れたような感覚に陥りました。こういった選択肢を通じた物語の体験のさせ方もかなり巧妙だったと感じます。
「繋がるまで待つ」という時間が持つ意味

他にも、電話をかける際、何度もかけ直したり、相手が受話器を取るまでじっと待ち続けたりする場面があります。現代のゲームなら「テンポが悪い」と切り捨てられがちな要素ですが、本作ではこれが「どうか繋がってくれ」と祈るような時間に変わることも。
また、突然かかってくる電話の不気味さを活かした恐怖など、電話という題材を活かした素晴らしい体験の一部として最適化されています。
最後に「電話を切る」のはあなた自身

(※結末の核心には触れませんが、少しだけ演出に触れます)
特に最終盤、メアリ自身の正体と過去が明らかになる展開には震えました。
そして、最後に救うべき相手は誰なのか。物語の最後、プレイヤー自身がその手で「電話を切る」という操作をさせられる演出は、あまりにも切なく、そして愛に溢れていると思いました。
自分と同じ痛みを持つ人を救い、最後に自分自身が救われる……。最後に「さようなら」を選択させるその瞬間、自然と涙が溢れてくるような、インタラクティブ性を活かした最高峰の演出だったと感じます。
気になったところ・不満点
非常に素晴らしい作品ですが、人を選ぶ部分も確かにあります。
その1:コンセプトゆえの「テンポの重さ」と「人を選ぶ設定」

「世界最後の話し相手」というコンセプトゆえ、ゲーム全体を通してトーンは一貫して暗く、静かです。圧倒的な演出の凄さはありますが、この「世界の終わり」というシチュエーションや雰囲気に魅力を感じられないと、同じ工程が繰り返される場面で集中力が途切れてしまうかもしれません。
また、ボイスが合成音声のみである点も注意が必要です。本作の演出としては完璧に機能していますが、人気声優によるフルボイスの熱演を期待して遊ぶと、少し肩透かしを食らう可能性があります。
良くも悪くも「刺さる人には徹底的に刺さる」タイプの作品なので、万人におすすめとは言いません。ですが、ここまでのレビューを読んで少しでも「気になる」と思ったあなたは、迷わず手に取るべき一冊ならぬ一作です。
まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『シュレディンガーズ・コール』のクリアレビューをお届けしました。
本作は、「人と繋がることの痛みと救い」を、文字通り心に刻み込んでくる傑作アドベンチャーです。
各エピソードの後半で見せる怒涛の展開、そして「最後の電話」を終えた後の言葉にならない余韻は、他のゲームではまず味わえません。自分の心の奥底にある「後悔」や「優しさ」を照らしてくれるような、不思議な力を持った作品でした。
正直、プレイ前はここまで感動するとは思っていませんでした。演出、音楽、そしてゲームならではの仕掛け。そのすべてが噛み合った、間違いなく心に残る名作です。クリア時間は10時間程度。価格も2480円とお手頃になっています。
泣けるゲームを探している方、物語の雰囲気にどっぷりと浸りたい方は、ぜひプレイしてみてはいかがでしょうか。

