こんにちは。ヤマザキです。
今回は、『Staffer Case: 超能力推理アドベンチャー』のクリア後の評価・感想・レビューになります。
この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。
- 重厚なミステリーアドベンチャーゲームが好きな方
- 人の内面や社会の理不尽といった、深いテーマを扱った物語に触れたい方
- 予想を裏切るシナリオ展開で、長く記憶に残る作品を探している方
はじめに
『Staffer Case: 超能力推理アドベンチャー』は、2023年4月30日に発売されたインディーズの推理アドベンチャーゲームです。本作の舞台は1960年代のロンドン。物理法則を捻じ曲げる力を持つ物質「マナ」が存在し、それを操る超能力者「ステッパー」が暮らす世界です。そんな中、主人公はマナが関与した超能力事件の捜査官として、仲間の能力も借りながら証拠を集め、謎を解き明かしていくことになります。2025年5月29日には、フルボイス化とswitch版も発売され、その完成度から徐々に話題が広がり、知名度を上げている作品でもあります。
今回、その話題作をクリアまでプレイしましたが、結論から言えば、「圧倒的なシナリオ完成度と深いテーマ性で、プレイヤーの心に強く刻まれる、傑作ミステリー作品」でした。
予想の裏の裏をかく怒涛の展開、人間の内面を深く掘り下げたキャラクター描写、そして理不尽な現実や秩序といった重厚なテーマ。フルボイスで語られるその物語は、驚きと感動、そして深い問いを私たちに投げかけてくる作品となっています。
今回は、そんな本作の魅力や気になったところを詳しく見ていきましょう。
『Staffer Case: 超能力推理アドベンチャー』の魅力
ここからは本作の魅力について、見ていきましょう。
その1:圧倒的な完成度を誇るシナリオ

物語は、主人公「ノートリック・ケース」が故郷の田舎からロンドンへとやってくるところから始まります。本作の舞台となるロンドンは、物理法則を捻じ曲げる力を持つ物質「マナ」が存在し、人口の10分の1が「ステッパー」と呼ばれる超能力者で占められる特殊な街です。主人公は、マナ事件を専門に扱う「マナ現象管理局」に配属されます。マナ事件とは、スキル(作中における超能力の呼称)を持つステッパーが関与する事件のことで、一般的な捜査手法では真実にたどり着けないものもあります。マナ現象管理局の捜査官たちもまたステッパーであり、彼らは自身のスキルを駆使して調査を進めていきます。スキルによって引き起こされた事件を、スキルによって解決することが彼らの仕事です。しかし、主人公はステッパーではない一般人。なぜ彼がこの特殊な部署に配属されたのか、そしていかにして事件を解決していくのかが、本作の大きな見どころとなっています。
シナリオの完成度について

本作の最大の魅力は、その圧倒的なシナリオの完成度にあります。
ケース1からケース5まで、基本的には1話完結の形式で物語が進むものの、その根底には緻密に練り上げられた複数の要素が深く絡み合っています。読手の予想を裏切り続ける事件の真相、主人公たち主要キャラクターの個性と、それぞれが抱える内面の丁寧な描写、そして、マナ現象管理局全体が抱える「2年前の事件」を巡る因縁や、主要人物たちの秘めたる想いが複雑に絡み合い、一つの重厚な物語として描かれていきます。
伏線回収と重厚なテーマ性

特に物語は常にプレイヤーの予想を裏切り、「おいおい、嘘だろ…」と思わず声が出てしまうような展開の連続です。張り巡らされた伏線は、最終局面で一本の線に繋がり、新たな真実が見えてきたかと思えば、そのさらに奥に隠された、予想だにしなかった真相が明らかになります。そして、最終章で全ての意味が明らかになる仕掛けは、まさに鳥肌モノです。プレイヤーが選択してきたそれぞれのルートが、物語のテーマ性と深く結びついており、真実が必ずしも幸福をもたらさないという重い問いを投げかけてきます。
これほどまでに作り込まれた伏線回収と、一貫したテーマ性を持つ物語には、なかなか出会ないと思います。
その2:作り込まれた調査資料と重厚な推理体験

本作のゲームプレイは、詳細に作り込まれた調査資料を基に、事件の根拠となる情報を指し示していく体験が中心です。調査資料には、仲間であるステッパーたちのスキルやプロフィールといった管理情報、そして捜査中に見つけた証拠のメモなどが含まれます。特筆すべきは、超能力が事件解決の「万能な手段」ではなく、あくまで「情報追加のツール」として機能する点です。例えば、仲間の一人、テナのスキルは、聞き込み中に相手がいつ嘘をついたかが分かるというもの。この「嘘の発言」を手がかりに推理を進めることで、新たな真実へとたどり着くことができる容易に設計されており、超能力はプレイヤーの推理を助けるものという扱いになっています。
歯ごたえのある難易度設定

その上で、本作はプレイヤーによる選択の幅がかなり広く、歯ごたえのある難易度に設定されています。「この事実の根拠を指し示せ」といった問いに対し、膨大な資料の中から特定のポイントを指摘する必要があります。中には2箇所の情報を示す必要がある場面もあり、推理は一筋縄ではいきません。しかし、どの資料に答えがあるかを教えてくれるヒント機能も用意されているため、途方もなく難しいというわけではなく、バランスが取れています。
全体を通して、歯ごたえがあるため、じっくりと腰を据えて謎解きを楽しみたい人にはたまらない作品となっています。
事件を整理する真相を導き出す六角推理

そして終盤には、集めた証拠を元に議論を進める「六角推理」という要素が登場します。
これは六つの証拠を提示して真相を導き出すシステムで、まさに最終局面における推理の集大成と言えるでしょう。一部の証拠が間違っている場合は、正解の証拠の数を教えてくれますが、具体的に「どの証拠が間違いか」までは示されないため、プレイヤーは真剣に思考を巡らせる必要があります。
特に終盤では、これまで集めてきた全ての証拠が鮮やかに繋がっていく演出が、物語の完成度と相まって、極上の推理体験へと昇華されていたように感じました。
証拠の提示によって、物語も分岐する

また、作中には物語を大きく左右する分岐点も存在します。
捜査資料の中でどの証拠を指し示し、どのような意図で発言するかによって、バッドエンドとトゥルーエンドへとストーリーが分岐します。分岐点の直前では必ずセーブを促すメッセージが表示されるため、必ずセーブしておきましょう。なお、本作のバッドエンドはシナリオ全体において非常に大きな意味を持つため、各章ごとにバッドエンドも回収してから次の話へ進むことをお勧めします。
資料の作りこみにも注目

イベントシーンの作画枚数は多くはないものの、その分、詳細に作り込まれた資料には注目したいところです。
ゲーム体験の質を高めている要素となっており、プレイヤーは資料に集中し、自らの頭で事件を組み立てていく体験が強調されています。
その3:欠点も含めて人間として描かれるキャラクターの奥深さ

本作に登場するキャラクターたちは、それぞれが個性豊かで、その内面が非常に丁寧に描かれています。
冷静沈着なチーム長のレッドフィンズ、愛想が良く優しい女性テナ、頼まれると断れないお人好しな一面を持つブライアン、そして頭脳明晰でありながらも得体のしれない主人公ノート。特にこの主要な4人のキャラクターは、その内面が非常に深く掘り下げられています。

特に本作はキャラクターの欠点や弱さも丁寧に描写しています。
彼らが抱える葛藤、苦悩、そして時には異常性すらも、物語の中で丁寧に描かれます。そうした欠点や心の闇も含めて、彼らが「人間」としてそこに存在している説得力につながっていて、深く感情移入することができる要素にもなっており、そのうえでそれぞれのキャラクターの信念の描き方には徹底した一貫性があります。
物語が進むにつれてそれぞれの秘めた想いや目的が明らかになっていく展開には、強く引き込まれてしまいましたし、そんな彼らがどのような選択をするのか、その行く末が常に気になる作品でした。
その4:フルボイスでこの価格は破格のコストパフォーマンス
本作はフルボイスで物語が進行するため、非常に没入感が高いです。キャラクターたちの感情が声によって豊かに表現され、重厚なシナリオをより一層深く味わうことができます。
これほどまでに作り込まれたシナリオとゲームプレイでありながら、その価格とボリュームも良心的です。筆者の場合、クリアまでに要した時間は約15時間程度でしたが、じっくりと推理を楽しむ方であればさらに多くの時間を費やすことになると思います。価格は、ダウンロード版はSteam版が2,100円、Nintendo Switch版が2,950円となっています。(いずれも税込)
フルボイス対応でこのボリュームとクオリティは、まさにフルプライス以上の満足感が得られる、破格のコストパフォーマンスを誇る作品です。

気になったところ・不満点
傑作であることは間違いありませんが、いくつか気になる点もありました。
その1:UIの煩雑さ

本作の操作性、特にUIは、正直なところあまり洗練されているとは言えません。
証拠資料の中から根拠となる箇所を指し示すゲームプレイが主軸となっていますが、プレイヤーに求められる操作の幅が広く、複雑さを感じる場面が多々あります。特に、2つの手がかりを同時に指し示す必要がある際には、ピン止めなど操作自体は理解できるものの、直感的ではないなど、快適性という点では、改善の余地があると感じました。
また、この操作性はPCでのプレイを前提としているように感じられ、そのうえで実際にPCでプレイした筆者でも不便さを覚えました。そのため、コントローラー操作を求められるコンシューマー版では、さらに厳しい体験となる可能性も考えられます。また、選択肢が出現する場面でセーブができないなど、細かな点で使いづらさを感じる部分が多いのも気になるところです
その2:直感的でない推理体験

また、推理パートにおいて、直感的ではない答えを求められることがあるのも気になるところです。
質問によっては「具体的に何を示すべきか」が曖昧に感じられる場面も多かったり、「似たような選択肢があるにもかかわらず、正解とされるかどうかの基準が分かりにくい」と感じることがありました。同じ意味合いに思える選択肢でも不正解となることがあり、「これは正解だろう!」と強く主張したくなることも。結果として、時折理不尽さを感じてしまう場面がありました。
本作は、正解となる証拠を直接示さず、ヒントを教えてくれるサイトなども存在するため、もし推理に行き詰まった際には、そうしたインターネット上の情報を適宜活用することをお勧めします。
まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『Staffer Case: 超能力推理アドベンチャー』のクリアレビューをお届けしました。
UIの煩雑さや一部の推理システムの分かりづらさといった粗削りな部分は確かに存在します。しかし、それを補って余りあるほどの、圧倒的に完成されたシナリオと、欠点も含めて人間として丁寧に描かれるキャラクターたちの魅力に満ちた作品です。
予想を裏切る怒涛の展開、理不尽な現実と秩序の間で揺れ動くテーマ性、そしてプレイ後も長く心に残り続ける感動と問いかけ。重厚な物語や、人の内面を深く描いた作品が好きな方、歯ごたえのある推理体験を求める方、そして心の底から揺さぶられる感動を味わいたい方に、自信を持っておすすめできる傑作ミステリーです。気になった方はぜひプレイしてみてください。


