こんにちは。ヤマザキです。
今回は『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』のクリアレビュー・評価になります。
この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
購入の参考にしてみてください。
- 『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』の購入を検討されている方
- 『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』の評価・感想が気になる方
はじめに
『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』は、コーエーテクモゲームスより2021年4月22日に発売されたRPG作品です。本作は、2016年に発売された『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』にDLCなどを含めた完全版となっています。
最大の特徴は、アトリエシリーズ初のオープンワールドを採用した作品という点です。
従来作よりも圧倒的に広がったフィールドや、移動拠点となるアトリエなどこれまでにない旅の感覚を味わうことができるものになっています。前作『ソフィーのアトリエ ~不思議な書のアトリエ~』からも大幅な変更が加えられており、挑戦的な姿勢が感じられる意欲作に仕上がっています。
しかしながら、シリーズ初の試みであったためか、洗練されていない部分も散見されます。広大なフィールドを活かしきれていない移動の煩雑さや、UIの不親切さなど、快適なプレイ体験を阻害する要素も少なくありません。昨今では、オープンワールドを採用した作品は数多く存在するため、今からプレイすると、どうしても粗が目立ってしまうかもしれません。
『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』の魅力
ここからは本作の魅力について、語っていきます。
あくまで前作と比較した部分が多く、その点ご留意ください。
その1:広大なオープンワールドの魅力

本作の一番の魅力はその広大なオープンワールドでしょう。
前作『ソフィーのアトリエ』では、一つ一つのマップが狭く、さらに直接繋がっていなかったため、素材集めが良い意味での作業になりがちでした。これは、アトリエシリーズのゲームシステム上、ある程度は仕方ない部分ではありましたが、本作『フィリスのアトリエ』では、フィールドがオープンワールドになり、その広さは前作の数十倍にも及びます。
広大でシームレスに繋がった世界は、場所によって全く異なる風景が広がり、探索する楽しさが格段に向上しました。遮るものなく広がる雄大な景色を眺めながら、新しい発見を求めて自由に歩き回れるのは、本作最大の魅力と言え、旅をしている感覚を強く味わうことができます。
その2:ストーリーの進め方の変化

そして、ストーリーの進行方法も前作とは大きく変わっています。
本作ではアトリエが移動式になり、旅をしながら錬金を行う形式になりました。各地の目的地を目指し、そこに到着するとストーリーが展開していくという流れで進んでいきます。
前作では、レシピの発想と調合を繰り返していく中で自然とストーリーが進行していく形式でした。それぞれの作業を繰り返す中で、キャラクター同士の交流が生まれ、物語が進んでいくという、穏やかな流れが印象的でした。
しかし、本作では、前作のような反復的なプレイ体験からの脱却が図られています。よりストーリーを重視した構成となり、広大なフィールドを舞台とした冒険譚としての側面が強まりました。未知の世界を旅するワクワク感、目的を達成するごとに成長していくフィリスの姿からは、前作にはなかった冒険という部分を強く実感できるでしょう。
その3:フィリスの成長を描く物語に注目

本作のあらすじは、閉鎖された街で暮らす少女フィリスが、外の世界に憧れを抱き、一人前の錬金術士を目指して旅立つ物語です。様々な人との出会いを通して、フィリスは錬金術の腕前を磨くと同時に、人間としても大きく成長していきます。
幼いながらも芯の強さを感じさせる主人公でえあるフィリスが周囲の人々に支えられ、励まされながら成長していく姿には、心温まるものがあります。旅を通して様々な経験を積み、錬金術士として、そして一人の人間として成長していくフィリスの姿には感慨深いものがあります。旅と成長というテーマが明確に描かれている点は、本作の魅力と言え、個人的に大好きなポイントです。

また、前作『ソフィーのアトリエ』のファンには嬉しい要素として、前作のキャラクターが多く登場する点も挙げられます。なんと、フィリスの師匠として前作の主人公ソフィーが登場し、ストーリーの展開によっては、ソフィーと戦闘する場面も用意されていいます。前作をプレイした方はもちろん、本作からプレイする方も、個性豊かなキャラクターたちの織りなす物語を楽しむことができるでしょう。
気になったところ
その1:オープンワールドに対してシステムが整理しきれていない
前述したように、本作は前作までの閉鎖的なマップから大きく広がりを見せ、ストーリーの進めた方もフィールドの各地で進める形式になりました。
このすさまじいゲーム性の変化にシステム面の整理が追い付かなかった印象は強いです。
ファストトラベルや移動の不便さが目立つ

本作はマップ内であればファストトラベルが可能ですが、ワールドマップ上では機能しません。そのため、広大なマップを移動する際には、プレイヤー自らの足で歩く必要があり、テンポの悪さを感じました。
特に、マップの広大さと移動手段の少なさが組み合わさった結果、イベントをこなすために無駄に時間を取られるケースが目立ちます。例えば、船着き場は船に乗る以外に用事がなく、一本道で採集ポイントもほぼない場所です。にもかかわらず、橋端から移動するのに走りで40秒もかかるのは、いくらなんでも長すぎると感じました。イベントで話しかけるためだけに、この何もない道を何度も往復させられた時は、さすがにきつかったです。
その上、夜になると、人の家に入れなくなったり、LPというスタミナの概念は、更に移動大変さを増長させていました。前作から引き継いだ要素ではあるものの、本作のゲーム性にはあっていませんでした。
UIの不便さ

UIの使いづらさが、広大な世界を探索する上で大きな障壁となっています。
常に多数の目的が用意されているにも関わらず、メニュー上での整理が分かりづらく、何をすれば良いのか迷いがちです。目的地設定もエリアマップ内限定の上、クエストの情報は曖昧で、広大なマップを彷徨うこともしばしば。前作と比べてマップが格段に広くなったにもかかわらず、探索をサポートするUIが追いついていない印象は否めません。
例えば、エリア全体を表示するマップには方角が表示されないため、東西南北すら分からず、目的の方向へ進んでいるのか判断に迷う場面が多々ありました。また、洞窟内ではミニマップすら表示されないなど、かなり厳しかったです。
その2:レシピの発想と調合について
そして本作の調合についても触れてみます。
前作を踏襲しており、前作をプレイ済みの方であれば、システムで困ることはないと思います。
ただ、いくつか気になる点もあります。
熟練度という仕様について

本作の調合には、「熟練度」というシステムが存在します。
これは、アイテムごとに設定された経験値のようなもので、特定のアイテムを繰り返し調合することで上昇し、より強力なアイテムを制作できるようになります。
しかし、本作において、この「熟練度」システムは、調合本来の楽しさを阻害していると感じました。前述した通り、広大なマップを移動して素材を集めること自体が大変な作業であるにも関わらず、さらに特定のアイテムを何度も調合しなければならないのは、大きな負担となります。
移動の煩雑さに加え、この「熟練度」システムが、強いアイテムを調合するハードルを必要以上に上げてしまっているのは否めません。
レシピの発想について

前作『ソフィーのアトリエ』では、レシピ帳のようなもの存在しており、錬金術の楽しさを支える要素の一つとなっていました。ここには、新しいレシピを発想するためのヒントが具体的に記されており、プレイヤーはそれを参考にしながら、行動を行うことで、新たなアイテムを発想する楽しみがありました。
しかし、本作では、レシピ発想の条件が不明確なものが多く、プレイヤーは手探りで進めていくしかありません。前作のように、レシピ帳を埋めていくような達成感や、レシピ発想を通してストーリーが進む感覚が薄れてしまったのは、残念な点として挙げられます。
まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ DX』の評価・レビュー・感想をお届けしました。
個人的な感想としては、合わない部分が多かったと言わざる負えません。
作品単体として評価するならば、決して悪い出来ではないではですし、2016年という早い段階で、オープンワールドという挑戦に踏み切った点は素晴らしいと思っています。広大な世界を旅する感覚、個性的なキャラクターたちとの出会い、錬金術を通して成長していくフィリスの姿など、本作ならではの魅力があるのも事実です。
しかしながら、2024年現在、オープンワールドのゲームは数多く存在し、洗練された作品も少なくありません。それらの作品と比較してしまうと、今プレイするとどうしても本作の不便さが目立ってしまいます。
毎年新作がリリースされるアトリエシリーズにおいて、ここまで大胆にゲーム性を変えてきたことには敬意をしめしたいものの、これからプレイする方は購入の前によく検討されることをお勧めします。

