【カリギュラ オーバードーズ】クリアレビュー・評価|ゲーム性は洗練性に欠けるものの、現実から逃げ出した大人を描くテーマ性は唯一無二の魅力を持つ意欲作【Caligula Overdose】

レビュー
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こんにちは。ヤマザキです。

今回は『Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ』の評価・感想・レビューになります。

この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。

※シナリオのネタバレはできる限りしないようにしていますが、気になる方は注意を

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『Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ』とは

Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ』は2018年5月17日にフリューから発売されたRPG作品です。開発はヒストリア、ジャンルは「学園ジュブナイルRPG」となっています。

本作は2016年6月23日にPsvitaで発売された『Caligula -カリギュラ-』のリメイク作品という立ち位置の作品になります。本作のジャンルは「学園ジュブナイルRPG」とされており、高校を舞台に少年少女たちの葛藤や成長を描く作品になっておりイメージとしては『ペルソナ』のような作品になります。

シナリオライターとして『女神異聞録ペルソナ』や『ペルソナ2 罪/罰』を手掛けた「里見 直」さんを起用している点や現役ボカロPに楽興提供を受けている点など、いくつか注目ポイントを持っている作品でもあります。

そんな本作の評価ですが、一言でいえば、ゲームとしての洗礼性には欠けるものの、ペルソナとはまた違った視点で描かれるシナリオのテーマ性や、敵側につくエンディングなどの今までのゲームでは見られなかった取り組みには、挑戦的な姿勢がうかがえる作品になっており、非常に面白いと感じました。

今回はそんな『Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ』の評価や注目ポイントについて語ってみたいと思います。

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ストーリー・キャラクターについて

現実世界に帰るため帰宅部となり、メビウスからの脱出を目指す物語

本作の舞台は自我が芽生えたバーチャルアイドル μ(ミュウ)が人々の幸福のために作りだした仮想世界「メビウス」になります。この世界では、現実世界で何かしら苦悩を抱えた人が招かれ、高校生となって、永遠に歳をとらずに、悩みから目をそむけたまま生きることができます。

プレイヤーは「メビウス」からの脱出を目指す帰宅部に所属し「メビウス」を守ろうとする楽士と戦いながら、現実へ帰る方法を探すといったあらすじになっています。

なぜつらい現実世界に戻りたいのか、登場人物の描き方

個人的に本作の魅力だと思っている点が、何よりも人間らしいキャラたちです。

学園ジュブナイルRPGとはいうものの、本作のキャラは現実から逃げてきた人で、その中には大人も多くいます。
思春期の青春を描く作品はそれはそれでよいのですが、学生ではない大人が現実から目を背けた理由は何なのか、それでも帰宅部として現実に帰ろうとする理由は何なのか、過去に対する後悔やそのキャラの人間性が伺える描写が丁寧で、そのテーマ性はペルソナと違った良さがあると感じました。 過去を受け止めて人間として前を向いていく過程はすごく好きですし、現実世界に生きる大人にこそ、刺さるものになっています。

1人1人を掘り下げるキャラクターシナリオの存在

そして、そんなキャラたちを掘り下げるキャラクターシナリオにも注目です。
これはペルソナのコープに近い要素になっていて、10段階あるキャラクターシナリオを読み進めていくと各キャラへの理解が深まるものになっています。

この内容が非常に良かったと思っています。
上記で挙げた通り、それぞれのキャラの過去や葛藤や成長といった内面を詳しく掘り下げるものになっている点や、仲間キャラが12人と非常に多いので、メインストーリーで描き切れない部分を補填する役割になっていました。面白いのが、各キャラの抱えている事情が明かされるタイミングで、「○○の心に踏み込みますか?」という演出があり、これも没入感を生み出してよかったです。

しかし正直なところ、このキャラエピソードに関しては不満点も多いです。

  • 自由に動けるタイミングが限られているため、敵側も合わせると20人程度いるキャラのエピソードを一気に進める必要がある点。
  • 10段階に分かれているが、1度に3~4つのエピソードを進めるときも多く、なぜ10段階で別れているのか分からない点。
  • 選択肢を間違えると「失敗!」のような演出が流れ、やり直しを求められるのもストレスがたまる点。
  • 予算の問題か、ボイスはついているものの、演出が非常に薄い点。

など、雑な点が多くみられるのは残念なポイントかもしれません。

楽士エンディングについて

また、本作の注目要素として、『楽士ルート』というものがあります。

「楽士たち」はメビウスという現実ではない世界を守ろうとする勢力のことで、メビウスを壊し、現実に帰ろうとする帰宅部の敵となる存在です。物語上の選択肢によっては、プレイヤーは帰宅部として活動しつつ、敵である楽士にもなるという、「楽士ルート」に進むことができます。

正直、ご都合主義的な側面も多く、ツッコミどころもあるのですが、敵キャラへの理解を深めるという面では非常に面白い試みだったと感じています。楽士ルートに入ると楽士たちとの交流や、各楽士のキャラエピソードを確認することができます。楽士たちがどういった理由で現実に苦悩し、どういった理由でメビウスを守ろうとしているのかが描かれ、帰宅部とは違った決断した人たちの境遇や考えを理解できるものになっています。

とあるキャラのセリフに「現実に戻っても私には何もない。例えまがい物でも、大事なものはもうここにしかないんだ…」というセリフがあります。このキャラはかなり過酷な境遇を背負っており、その上で出た発言と考えると胸が痛むものがありますよね…

楽士ルートの行動によってはエンディングまでもが分岐するものになっており、主人公が裏切って敵側につくという体験は現代のゲームにおいては非常に斬新でなかなか味わえないものになっていました。

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戦闘・バトルについて

数手先の未来を打ち込む斬新なシステム

本作の戦闘システムは従来のコマンドバトルをベースに未来予知や配置といった要素を組み合わせた斬新なものになっていました。キャラを自由に動かしつつ、スキルを使い攻撃を行います。スキルにはMPを消費するため、ソ俺を管理していく要素もあるものになっています。

各攻撃には打ち上げやガード破壊などがあり、合わせることで各キャラの特性を活かしたコンボを決めることができます。

一番の特徴はとしては、未来の行動もあらかじめ入力するという点です。
というのも行動を選択すると、その行動を選択した場合の未来が映し出されます。これはシミレーションのような要素になっていて、未来での結果を予測することが可能です。

先の未来の行動も合わせて3つまで打ち込むことができ、仲間との行動を合わせたコンボをつなげていく感覚は唯一無二のものになっていました。正直、今まで見たことないような戦闘システムになっており、ポテンシャルがすごいと感じています。

斬新な戦闘システムの問題点

ただこの戦闘、ありえないくらいテンポが悪いのが一番の問題でした。
他の要素も噛み合って、序盤以外、戦闘の魅力は感じなかったのが正直なところです。

まずこの戦闘ですが、3つ先の行動まで入力する必要があるため、操作する手順が非常に多いです。
手順を表すと下記の通りになります。

戦闘の手順
①一つ目の行動を選択。
②一つ目の行動のシミレーションを確認し、行動を確定。
③二つ目の行動を選択。
④二つ目の行動のシミレーションを確認し、行動を確定。
⑤三つ目の行動を選択。
⑥三つ目の行動のシミレーションを確認し、行動を確定。

これをパーティメンバー4人分入力する必要があるので、1回の行動をするだけで驚異の24回の操作が必要です。仲間キャラはオートで動かすこともできるため、さすがにここまではひどくはないものの、とんでもなく時間が掛かる点は変わりません。正直、雑魚敵との戦闘に対して、そこまでゆっくり考えないですよね…

最終的に決定ボタンを連打し、3回の攻撃を入力し、あとは待つという戦闘になります。

敵が多すぎる/ダンジョンが長すぎる

その上で単調で迷路のようなダンジョン構造がものすごい長いうえ、敵が多すぎます。

まず、上記の画像を見ていただきたいのですが、これがマップになっています。
このようなマップ展開をしてくれるので、まだマシではあるものの、単調なダンジョンがあまりにも長いです。もはや迷路と言っても差し支えないです。ペルソナとかにもこういった単調さってありましたけど、さすがにここまでではなかったと思います。

その上で敵があまりにも多すぎます。
そもそもが1回の戦闘時間が長いのに、戦闘回数も果てしなく多いので敵を1体ずつ倒していると、本当にキリがないです。その上で、レベルが上がりにくく、無視してい進むと、ボス戦で詰んだりします。敵は決して強くないので、一体一体にちゃんと未来の行動を考える必要はないというのも残念なところです。もうこれに関しては個人的には難易度をEASYで敵は無視して進むのが良いと考えています。

このように戦闘に関してはポテンシャルこそ強いものの、時間が掛かるだけで、そのポテンシャル活かせていたとは言い難いです。最終的にボス戦でさえも雑魚戦のようにボタン連打でごり押しで勝てますし、戦略性すらなくなっていました。

クリアまで時間は30時間程度でしたが、体感では20時間くらい、この迷路をぐるぐるしていた印象があり、ボリュームを盛るためとはいえ、あまりにも引き伸ばすぎたかもしれません。

その他

Vitaからの移植であること

本作はVitaで発売された原作から2年後に発売された作品ということもあり、完全なリメイクというよりかは、リマスターとリメイクの間のような作品になっています。

そのため、モデルやモーションの質が荒かったり、Vitaの原作から流用しているものがあるのか、どうしても個々で見ると低クオリティな部分が目立つのは確かです。しかし、全体を通してみると、PS4のタイトルとして、違和感のない出来に仕上がっていて、モデルやモーションについても粗さを感じさせないようにカメラワークなどで工夫がなされていました。Vitaからの移植である点を踏まえ、開発会社の努力がうかがえるものになっており、この点は評価できると思います。

現役ボカロPを起用した音楽について

本作の常陽キャラで自我が芽生えた、バーチャルアイドル μ(ミュウ)というのはボーカロイドをモチーフにしている部分が強く、作中の音楽は実際のボカロPが書き下ろした音楽が使われていますしかもBGMというわけではなく、実際にボーカルの声が入った曲が戦闘中などでも流れていて、かなり斬新な取り組みに感じました。

何より、有名なボカロPが手掛けていることもあり、音楽は評価は高くなっており、耳に残るものが多いです。1つのダンジョン攻略の中でずっと1つの曲が流れるのですが、案外飽きませんし、なんならテンションががってよかったと思います。

なお、楽曲を提供しているボカロPには「からくりピエロ」などで知られる40mPさんや「ロキ」などで知られるみきとPさん、「天ノ弱」などで知られる164さんなど、ボカロ好きであればだれもが知るような有名な方が多く、その点も注目してみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『Caligula Overdose-カリギュラ オーバードーズ』のクリアレビュー・評価をお届けしました。

学園ジュブナイルRPGとして展開されていく本作の物語は、現実から逃げた大人たちが主人公であるからこそ、ペルソナシリーズとは違った、重さや人間らしさという部分がテーマとして描かれていたのが非常に印象に残りました。

主人公が裏切る展開や斬新な戦闘システムなど、洗練性に欠けるものの、挑戦が多く見られた本作は1人のプレイヤーとして、とても面白い体験を提供してくれたと思っています。

続編である「カリギュラ2」も出ていますので、そちらについてもプレイしてみようと思います。
気になった方は購入を検討されてみてはいかがでしょうか。