今回は『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』の魅力と、クリアまで遊んで気になったポイントをレビューします。大きなネタバレは避けているので、購入を検討している方や、『カリギュラ2』からシリーズに興味を持った方もぜひ参考にしてみてください。
✓ 重く人間臭いテーマを扱ったRPGが好き
✓ キャラクターの過去や葛藤を深く掘り下げる作品が好き
✓ 独創的な戦闘システムや挑戦的なゲームが好き
はじめに
『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』は、2018年5月17日に発売された学園ジュブナイルRPGです。開発はヒストリア、発売はフリューが担当しています。本作は、2016年にPS Vitaで発売された『Caligula -カリギュラ-』に、新キャラクターや新シナリオ、女性主人公などの要素を追加して再構築した作品です。
学園を舞台にしたRPGではありますが、描かれるのは単純な青春物語ではありません。登場人物たちはそれぞれ現実で大きな悩みや後悔を抱え、理想の姿で生きられる仮想世界「メビウス」へ逃げ込んでいます。
実際にクリアしてみると、ゲームシステムやダンジョンにはかなり粗さを感じました。一方で、「なぜ人はつらい現実へ戻ろうとするのか」というテーマや、現実から逃げた人々の描き方には、本作でしか味わえない魅力があります。
また、未来を予測して行動を組み立てる独自のバトルや、敵側の立場を体験できる「楽士ルート」など、挑戦的な要素が多いのも印象的でした。
基本情報
| 発売日 | 2018年5月17日 |
|---|---|
| ジャンル | 学園ジュブナイルRPG |
| 開発 / 発売 | ヒストリア / フリュー |
| 対応ハード | PS4 / Nintendo Switch / PS5 / Steam |
| 価格 | 8,778(税込み) |
| クリア時間 | 約30時間 |
物語・キャラクターの魅力
現実から逃げ込んだ人々が、再び現実へ帰る物語

本作の舞台は自我が芽生えたバーチャルアイドル μ(ミュウ)が人々の幸福のために作りだした仮想世界「メビウス」になります。この世界では、現実世界で何かしら苦悩を抱えた人が招かれ、高校生となって、永遠に歳をとらずに、悩みから目をそむけたまま生きることができます。
プレイヤーは「メビウス」からの脱出を目指す帰宅部に所属し、「メビウス」を守ろうとする楽士と戦いながら、現実へ帰る方法を探すといったあらすじになっています。
「なぜつらい現実へ戻るのか」を描く人間臭さ

個人的に本作の魅力だと思っている点が、何よりも人間らしいキャラたちです。現実から逃げてきた登場人物の中に、大人も多く含まれています。
学生時代の悩みや青春を描く作品は数多くあります。しかし本作では、「大人になった人間がなぜ現実から目を背けたのか」「それでもなぜ、つらい現実へ帰ろうとするのか」という部分まで踏み込みます。過去への後悔やコンプレックス、その人物自身の弱さまで丁寧に描かれており、そこから自分の現実を受け止め、再び前を向こうとする過程がとても良かったです。
学生よりも、むしろ現実を生きる大人にこそ刺さるテーマを持った作品だと感じました。
一人ひとりの内面を掘り下げるキャラクターシナリオ

そして、そんなキャラたちを掘り下げるキャラクターシナリオにも注目です。
これはペルソナのコープに近い要素になっていて、10段階あるキャラクターシナリオを読み進めていくと各キャラへの理解が深まるものになっています。
この内容が非常に良かったと思っています。
上記で挙げた通り、それぞれのキャラの過去や葛藤や成長といった内面を詳しく掘り下げるものになっている点や、仲間キャラが12人と非常に多いので、メインストーリーで描き切れない部分を補填する役割になっていました。面白いのが、各キャラの抱えている事情が明かされるタイミングで、「○○の心に踏み込みますか?」という演出があり、これも没入感を生み出してよかったです。

しかし正直なところ、このキャラエピソードに関しては不満点も多いです。
- 自由に動けるタイミングが限られているため、敵側も合わせると20人程度いるキャラのエピソードを一気に進める必要がある点。
- 10段階に分かれているが、1度に3~4つのエピソードを進めるときも多く、なぜ10段階で別れているのか分からない点。
- 選択肢を間違えると「失敗!」のような演出が流れ、やり直しを求められるのもストレスがたまる点。
- 予算の問題か、ボイスはついているものの、演出が非常に薄い点。
このように、キャラクターを深く知れる内容自体は魅力的な一方で、遊びやすさや見せ方には粗さが残っているのが惜しいところでした。
敵側の立場まで描く「楽士ルート」

また、本作の注目要素として、『楽士ルート』というものがあります。
「楽士たち」はメビウスという現実ではない世界を守ろうとする勢力のことで、メビウスを壊し、現実に帰ろうとする帰宅部の敵となる存在です。物語上の選択肢によっては、プレイヤーは帰宅部として活動しつつ、敵である楽士にもなるという、「楽士ルート」に進むことができます。
正直、ご都合主義的な側面も多く、ツッコミどころもあるのですが、敵キャラへの理解を深めるという面では非常に面白い試みだったと感じています。楽士ルートに入ると楽士たちとの交流や、各楽士のキャラエピソードを確認することができます。楽士たちがどういった理由で現実に苦悩し、どういった理由でメビウスを守ろうとしているのかが描かれ、帰宅部とは違った決断した人たちの境遇や考えを理解できるものになっています。
特に印象に残ったのが、現実へ戻っても自分には何も残されていないからこそ、たとえ偽物でもメビウスを守りたいと願う人物です。この人物はかなり過酷な境遇を背負っており、その上で出た発言と考えると胸が痛むものがありますよね…
楽士ルートの行動によってはエンディングまでもが分岐するものになっており、主人公自身が敵側の立場に入り、その思想や事情を知っていくという構造はかなり珍しく、本作ならではの体験でした。
戦闘・バトルについて
未来を予測して行動を組み立てる独自のバトル

本作の戦闘システムは従来のコマンドバトルをベースに未来予知や配置といった要素を組み合わせた斬新なものになっていました。キャラを自由に動かしつつ、スキルを使い攻撃を行います。スキルにはMPを消費するため、それを管理していく要素もあるものになっています。
各攻撃には打ち上げやガード破壊などがあり、合わせることで各キャラの特性を活かしたコンボを決めることができます。

一番の特徴は、未来の行動もあらかじめ入力するという点です。
というのも行動を選択すると、その行動を選択した場合の未来が映し出されます。これはシミュレーションのような要素になっていて、未来での結果を予測することが可能です。
先の未来の行動も合わせて3つまで打ち込むことができ、仲間との行動を合わせたコンボをつなげていく感覚は唯一無二のものになっていました。正直、今まで見たことないような戦闘システムになっており、ポテンシャルがすごいと感じています。
独自性は高いが、とにかくテンポが悪い

問題は、この仕組みを雑魚戦でも繰り返すため、とにかくテンポが悪いことです。
他の要素も噛み合って、序盤以外、戦闘の魅力は感じなかったのが正直なところです。
まずこの戦闘ですが、3つ先の行動まで入力する必要があるため、操作する手順が非常に多いです。
手順を表すと下記の通りになります。
戦闘の手順
①一つ目の行動を選択。
②一つ目の行動のシミュレーションを確認し、行動を確定。
③二つ目の行動を選択。
④二つ目の行動のシミュレーションを確認し、行動を確定。
⑤三つ目の行動を選択。
⑥三つ目の行動のシミュレーションを確認し、行動を確定。
これをパーティメンバー4人分入力する必要があるので、1回の行動をするだけで最大24回もの入力が必要です。仲間キャラはオートで動かすこともできるため、さすがにここまではひどくはないものの、とんでもなく時間が掛かる点は変わりません。正直、雑魚敵との戦闘に対して、そこまでゆっくり考えないですよね…
最終的に決定ボタンを連打し、3回の攻撃を入力し、あとは待つという戦闘になります。
敵の多さと長すぎるダンジョンがテンポをさらに悪化させる

その上で帰宅部とは違った決断した人たちの境遇や考え、敵が多すぎます。
まず、上記の画像を見ていただきたいのですが、これがマップになっています。
このようなマップ展開をしてくれるので、まだマシではあるものの、単調なダンジョンがあまりにも長いです。もはや迷路と言っても差し支えないです。ペルソナとかにもこういった単調さってありましたけど、さすがにここまでではなかったと思います。
その上で敵があまりにも多すぎます。
そもそもが1回の戦闘時間が長いのに、戦闘回数も果てしなく多いので敵を1体ずつ倒していると、本当にキリがないです。その上で、レベルが上がりにくく、無視して進むと、ボス戦で詰んだりします。敵は決して強くないので、一体一体にちゃんと未来の行動を考える必要はないというのも残念なところです。もうこれに関しては個人的には難易度をEASYで敵は無視して進むのが良いと考えています。
このように戦闘に関してはポテンシャルこそ強いものの、時間が掛かるだけで、そのポテンシャルを活かせていたとは言い難いです。最終的にボス戦でさえも雑魚戦のようにボタン連打でごり押しで勝てますし、戦略性すらなくなっていました。
クリアまで時間は30時間程度でしたが、体感では20時間くらい、この迷路をぐるぐるしていた印象があり、ボリュームを盛るためとはいえ、あまりにも引き伸ばしすぎたかもしれません。
その他に印象に残ったポイント
旧作ベースゆえに感じるグラフィックや演出の粗さ

本作はVitaで発売された原作から2年後に発売された作品ということもあり、完全なリメイクというよりかは、リマスターとリメイクの間のような作品になっています。
そのため、モデルやモーションの質が荒かったり、Vitaの原作から流用しているものがあるのか、どうしても個々で見ると低クオリティな部分が目立つのは確かです。しかし、全体を通してみると、PS4のタイトルとして、違和感のない出来に仕上がっていて、モデルやモーションについても粗さを感じさせないようにカメラワークなどで工夫がなされていました。Vitaからの移植である点を踏まえ、開発会社の努力がうかがえるものになっており、この点は評価できると思います。
有名ボカロPによる楽曲が世界観を彩る

本作の重要キャラクターであるバーチャルアイドル・μ(ミュウ)は、自我が芽生えた存在で、作中の音楽は実際のボカロPが書き下ろした音楽が使われています。しかもBGMというわけではなく、実際にボーカルの声が入った曲が戦闘中などでも流れていて、かなり斬新な取り組みに感じました。
何より、有名なボカロPが手掛けていることもあり、楽曲自体も非常に魅力的で、耳に残るものが多いです。1つのダンジョン攻略の中でずっと1つの曲が流れるのですが、案外飽きませんし、なんならテンションが上がってよかったと思います。
なお、楽曲を提供しているボカロPには「からくりピエロ」などで知られる40mPさんや「ロキ」などで知られるみきとPさん、「天ノ弱」などで知られる164さんなど、ボカロ好きであればだれもが知るような有名な方が多く、その点も注目してみてください。
まとめ

今回は『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』のクリアレビューをお届けしました。
本作には、長く単調なダンジョンや戦闘テンポ、キャラクターシナリオの遊びづらさなど、ゲームとして粗さを感じる部分がかなりあります。
一方で、「現実から逃げること」と真正面から向き合った物語は、今遊んでも非常に印象に残ります。
現実に苦しんでメビウスへ逃げ込んだ人々が、それでもなぜ現実へ戻ろうとするのか。反対に、なぜ楽士たちは偽物だと分かっていてもメビウスを守ろうとするのか。その両方の立場を描くことで、単純に「現実逃避は悪い」と片付けないところが、本作の大きな魅力だと思います。未来を予測する戦闘や楽士ルートなど、システム面でも挑戦的なアイデアが多く、完成度以上に「こんなゲームを作りたい」という強い個性を感じる作品でした。
粗削りではあるものの、他のRPGではなかなか味わえないテーマと体験を持った意欲作。
特に、人間の弱さや後悔を描く物語が好きな方には、一度触れてみてほしい作品です。
なお、続編『カリギュラ2』についてもクリアレビューを公開しています。















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