こんにちは。ヤマザキです。
今回は『魔法使いの夜』の評価・感想・レビューになります。
この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。
できる限りネタバレはしないようにしていますが、気になる方はご注意を。
- 『魔法使いの夜』に興味がある人
- 『魔法使いの夜』を購入しようか迷っている人
『魔法使いの夜』とは?
『魔法使いの夜』は2012年4月20日に発売されたノベルゲームです。
本作は「Fate/stay night」などで有名な「Type moon」が手掛ける作品で、「Fateシリーズ」や「月姫」のファンの方であれば、名前だけは知っているという方も多いと思います。時間がたってもなお、名作として名高い作品で筆者もいつか手を出してみたいと思っていました。
それが今回「switch・ps4」に移植として登場したためプレイしてみたのですが、聞いていた以上にすごい作品でした。何よりもその演出がすごく、ノベルゲーの枠組みを超えて、まるで映像作品を見ているかのような没入感と迫力を味合わせてくれるものになっていました。
正直、ノベルゲーとしての完成度で言えば、本作を上回る作品はないのではないだろうかと感じるくらい洗練された作品でした。一つ一つのシーンが非常に印象に残っていて、余韻がすごいです。フルボイス化によって、より解像度も上がっていますし、誰にでもおススメしたい作品になっていました。これが2012年の作品と言うのは正直信じられないです…
今回そんな本作の魅力やこれからプレイする人に注意してほしいポイントについて語っていきたいと思いますので、気になる方は購入の参考にしてみてください。
簡単なあらすじ

まずは簡単なあらすじから説明していきましょう
公式サイトより
- 1980年後半。華やかさと活力に満ちた時代の黄昏時。
都会に下りてきた少年は、 現代に生きる二人の魔女とすれ違う。- 少年はごく自然に暮らしてきて、
彼女は凛々しく胸を張って、
少女は眠るように隠れ住んで。- 三者三様の星の巡り。
交わることなんてもってのほか。
何もかも違う三人の共同生活が始まるのは、 あと、もうちょっと先の話───
『魔法使いの夜』の魅力
その1:ついつい読み進めてしまうシナリオの魅力

まず、取り上げたいのがそのシナリオの魅力です。
本作はかなりテンポが良く進むため、序盤から怒涛の展開で進んでいきます。。那須きのこさんが手掛けるそのシナリオは読み手を引き込む工夫であふれていますし、描写が丁寧でついついのめり込んでしまう没入感がありました。
また後述しますが、本作は演出がすごいため、バトルシーンの迫力がすさまじいものがあります。特に遊園地のシーンは読んだ人に強烈な印象を残すと思います。全体的にだれるシーンもなく、一気にエンディングまで読めるそのシナリオの完成度は圧巻です。
かなり展開が早いので、あまり物語に触れられないのですが、ぜひその物語を体験してみてほしいです。
その2:個性豊かなキャラたちの関係性の魅力

また本作のキャラも個性豊かで魅力的なキャラが多いです。
登場キャラの心理描写が丁寧で、そのキャラが何を考えていたのか、状況が良く伝わってくるため、キャラの性格や人柄が深くまで理解しやすいのです。シナリオ没入感が高いことも相まって、特に主要キャラ3人への愛着は物語を進めていくうえで自然と強くなっていくと思います。
山育ちで純粋な善人のような草十郎の生き方と、鉄の生徒会長でまっすぐで芯が通っている性格の青子、一見すると冷酷に見えるものの、おっとりとして抜けているところもある有珠の3人の性格と関係性はとても好きでした。日常シーンを見ているだけでも、随所につい笑ってしまうような掛け合いが散りばめられており、飽きずに楽しめたポイントになっていたかもしれません。

他にもサブキャラたちも魅力的です。
主人公の親友の鳶丸のアクセントやシスター姉妹のキャラは強すぎてびっくりしますね…いずれにせよ物語を面白くしてくるキャラ達なので、サブキャラ達にも注目してみてください
特に本作ではボイスがついているので、キャラの解像度というのはさらに上がっています。
その3:演出があまりにもすごすぎる
ここまでシナリオやキャラの魅力についてお伝えしてきましたが、それらの内容は言ってしまえば、他のゲームでも味わえるもの体験かもしれません。ですが、本作の唯一無二の魅力は別の場所にあり、それが演出表現です。
何といっても素材の使い方が抜群にうまく、ノベルゲーにもかかわらず、見ている時の情報量が多く、目が離せなくなる工夫に溢れています。読んでいるだけで、映画のように見ている時のような没入感が表現されたものになっています。
どういうことなのか、軽く説明してみたいと思います。
1.立ち絵の違い

まず目に入るのが、キャラの立ち絵の使い方でしょう。
通常のアドベンチャーゲームのイベントシーンでは、背景の立ち絵に並列にキャラが並び、表情やポーズのみが変わるといった構図が多いのですが、本作の場合は違います。立体的に表現されているところが特徴で、後ろ向きの立ち絵が用意されているのがその最たる例でしょう。どこからどういった配置で話しているのかの情報をさいげんしているため、物語の状況が分かりやすくなっています。
これにより、ありふれたイベントシーンでも、その時の状態をより深くを把握することができるのです。
2.背景の使い方

また背景の使い方についても注目したいです。
実は本作では背景のイラストの全体像を見せることがほとんどないです。例えば、同じ場所での会話シーンであっても、特定の箇所をズームしたり、あえて視界を狭めたりすることで、豊富なパターンを作っています。これらをこまめに切り替え続けることで、変化を与え、冗長な体験にならないようになっています。
3.演出表現のレパートリー

そのうえで、そのパターンを多くするための工夫はまだあります。
例えば、カットインの演出や、影を使った表現、立ち絵を重ねる、全体を白黒にするなど様々な表現が模索されています。前述した違いも含めて、レパートリーというものが非常に多く、どんなシーンでも最たる違いがあるようになっています。
4.文字の出方

「Typemoon」作品で共通する部分でもあるため、あまり違和感を感じていないと思うのですが、文字の出方についてもについても実はかなり特徴的です。
何といっても、背景のイラストの上から文字が展開します。通常だと、下に話している人の名前と話した内容を表示するウィンドウがあるのが普通です。ただ、本作の場合、一瞬後ろのイラストを見せた後に、上から文字のみが展開してきます。
そのため、自然と文字の位置に視点が集まるようになっています。文字読んでいる最中も背景の情報がすっと入ってくるようになっていて、小説を読みながら状況が理解できる感覚で進んでいきます。
5.動的表現の多さ

前述した内容を合わせて、常に動きがあるというのも特徴です。
少なからず、背景が動いていますし、素材を駆使して、いろいろな動きを再現してきます。一番印象的なのが、アクションシーンでしょう。ノベルゲーのアクションシーンというとあまり想像はつかないかもしれませんが、本作のバトルシーンは動きが満載です。
相手の攻撃に対して、こちらがどう出るかの、手に汗握る戦いの攻防が見て、分かるようになっていて、個々の表現はすごいとしか言いようがありません。
これらの表現によって読む映画のような没入感を実現できている

今あげたように、本作のイベントシーンは常に工夫があふれています。
そのため、目が離せない没入感を再現できており、ノベルゲーにもかかわらず、読む映画のような体験が味わえるようになっているのです。この特徴は他のノベルゲーにはない決定的な部分だと思っていて、本作がとびぬけた作品として評価される由縁にもなっていると感じています。
『魔法使いの夜』の注意しときたいところ
前述した通り、1つのノベルゲーとして見たときの完成度はすさまじい本作ですが、「思っていたのと違った」とならないために注意してほしいポイントもあります。
その1:ボリュームは控えめ

本作のボリュームは「月姫リメイク」「Fate/stay night」に比べるとボリュームは控えめなものになっています。
ストーリークリアまで13時間程度。番外編も合わせて18時間程度のボリュームになっていました。筆者はサクサク読み進めていくタイプなので、ゆっくり読むタイプの人からするともっと時間がかかると思います。
数々のゲームをプレイしてきた筆者からするとこのクオリティでこの時間遊べれば十分だと思いますし、価格もフルプライスではないので、正直批判するポイントでもないと思うのですが、他の「TYPE-MOON」作品のボリュームを期待していると肩透かしを食らってしまうかもしれません。気に留めておくと良いでしょう。
その2:意外とグロい
「月姫」などほかの作品をプレイしてきた方であれば、全く気にならないことだと思うのですが、以外にも本作はグロいシーンも多いです。直接的な表現がされるわけではないのですが、文章と演出がすごいため、凄惨なシーンの解像度が上がり、ついついグロさを感じてしまうのです。
筆者も「CERO:C」に油断していたのですが、確かにきついシーンもありますね…
とはいえ、一度でも「TYPE-MOON」作品に触れたことがある人であれば、気にならないものですし、それ以上に面白いので何の心配もいりません。
ただ、元々そういったもの苦手という方はこちらも気に留めておくと良いと思います。
まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『魔法使いの夜』のクリアレビューをお届けしました。
先が気になるシナリオはもちろん、圧倒的な演出力を持つ作品で、ノベルゲーにここまでのことができるのかと衝撃を受けた作品でした。視覚的な演出の工夫によって、ノベルゲーならではの冗長さを消し、小説を読む体験というよりかは1つの映画をみたような体験を表現した作品になっており、普段ノベルゲーに触れない方でもぜひ触れてみてほしい作品になっています。
「TYPE-MOON」の作品に興味がある方は多いと思うので、この機会にぜひ触れてみてはいかがでしょうか。