こんにちは。ヤマザキです。
今回は『AI:ソムニウムファイル』のクリア後の評価・感想・レビューになります。
この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。
※シナリオのネタバレはできる限りしないようにしていますが、気になる方は注意を
- 『AI:ソムニウムファイル』に興味がある人
- 『AI:ソムニウムファイル』の評価・感想が知りたい人
『AI:ソムニウムファイル』とは?
『AI:ソムニウムファイル』は2019年9月19日にスパイク・チュンソフトより発売されたアドベンチャーゲームです。
あらすじとしては、先進式人脳捜査部隊ABISに所属する捜査官である主人公、伊達 鍵(だて かなめ)が自身の左目のAI「アイボゥ」とともに連続猟奇殺人事件の謎に迫るというものになっています。
本作における大きなポイントとして、『Ever 17』 『極限脱出シリーズ』といった代表作をもつシナリオライターである打越 鋼太郎さんがシナリオを担当している点があげられます。特に『Ever17』に関しては怒涛の伏線回収や当時としては斬新な仕掛けが散りばめられた作品として有名で、ADV好きの筆者としてもいつかプレイしてみたいと考えていました。そういった有名なシナリオライターの方が手掛けた作品と言うことで、非常に期待していました。
そんな本作をプレイしてみた感想ですが、一言で言えば、とても面白かったです。
特に各ルートで散りばめられた伏線がきれいに回収されていくシナリオは非常に完成度が高く、「ここまできれいに伏線を回収するとは」と驚きすら覚えます。
シナリオについて
第一の事件とあらすじ

本作は猟奇殺人事件の真相とその結末を追う物語になっており、廃墟と化した遊園地のメリーゴーランドにで見つかった死体を操作する場面から始まります。事件の被害者は「灘海 湘子」。馬の上に乗せられ、ロープで後ろに手を縛られ、左目がない状態で発見されました。さらに湘子は伊達の友人である「沖浦 連珠」の元妻で、その二人の娘の「沖浦 みずき」が血の付いたアイスピックを持った状態で柱の中から発見されました。
プレイヤーは主人公である警察官の「伊達 鍵」として、この事件の謎と裏に隠された真相を各ルートをプレイしていきながら知っていくことになります。伊達の左目には高性能のAIを搭載した義眼である「アイボゥ」が組み込まれており、彼女とともに行動をしていくことになります。「アイボゥ」は非常に高性能なAIで人のような人格を持っており、文字通り主人公の相棒としてともに行動することになります。
物語の最序盤からこれでもかというくらい盛りだくさんな展開ですが、こういった謎や先が気になってついつい読み進めてしまうと思います。
個性豊かなキャラクターとギャグ要素

もう一つお伝えしたいのは、本作のキャラは非常に個性にあふれ、魅力にあふれるキャラが多いということです。正直、ここまでいくと癖が強すぎて、ちょっと最初は受け入れづらいかもしれませんが…
特に6年より前の記憶がない主人公「伊達 鍵(だて かなめ)」と左目の義眼AI「アイボゥ」。アイボゥに関しては文字通り主人公の相棒として同行するわけですが、なかなかに性格も個性的です。AIでありながらところどころにボケを入れて来たり、伊達との掛け合いについてみているだけでクスっと笑ってしまうシーンが多くあります。ソムニウムパートに関してはすごい独特な女性の見た目に変化し、この見た目と登場シーンのインパクトもすごくて笑ってしまいました。

他にもネットアイドルの「左岸 イリス」や伊達の友人の娘で同居人である「沖浦 みずき」、暴力団の組長でありながらイリスの大ファンである「熊倉 猛馬」など、一癖も二癖もあるキャラクターが登場します。正直、ちょっと癖が強すぎる感もあるのですが、終始物語のアクセントになっていて好きなポイントです。
プレイヤーは物語を進めていく中で、何かしらエンディングにたどり着くと思います。
しかし、最初にたどり着くエンディングの多くは、多くの謎を残しつつ、よく分からないままで終わることが多いと思います。もしかしたら「なんだこれ?」と思い、戸惑ってしまうかもしれません。
ただ、投げ出す前に一度待ってほしいです。
本作は各ルートで多くの伏線が展開されていきますが、それ等の伏線は他のルートをプレイし、さらに物語を進めていくことできちんと回収されていきます。
最後のエンディングまでたどり着くころには、怒涛の伏線回収とそのシナリオの完成度に驚くことになると思います。
ゲームシステムについて
本作はシナリオの謎を現地で実際に直接捜査を行う「捜査パート」と、ABISにある特殊な機械を使って対象の夢に潜り込む「ソムニウムパート」によって情報を集め、事件の謎に迫っていきます。
捜査パートについて

捜査パートでは、伊達の視点から事件の手掛かりを集めていきます。
基本的に視点を動かしつつ、該当箇所を調べたり、人物に話しかけることで物語が進んでいきます。視点は自由に動かすことができるため、選択の自由度は高めになっています。また、前述した通り、伊達の左目には高性能のAIを搭載した義眼であるアイボゥにより、遠くを見るズームやX線やサーモグラフィなどの最先端の技術を駆使した情報収集が可能になっています。
手がかり自体もそこまで意地悪なところにあるということはなく、あくまでプレイヤー自身が情報を集めていくゲーム体験を重視しているように感じました。
会話シーンなどの構図

この捜査パートは、事件現場の調査だけではなく、会話シーンなどでもこの構図が多用されています。一人称のプレイヤーの視点から情報を集めていくことにより臨場感を持ちつつ、シナリオに没入することができました。
多くの遊びが散りばめられており、ふつうは選ばない選択肢を試すことで、アイボゥやほかの仲間たちとの掛け合いが見れたり、隅々まで試してみたくなるような楽しさがありました。
捜査資料はいつでも回覧できる

捜査パートを含め、物語で得た情報は捜査資料として記録され、いつでも振り返ることができるようになっています。
こういったフローや情報をいつでも確認できる点は地味にありがたいポイントですよね。本作に限らず、複数のルートがあるADVでは、得た手掛かりや情報がどのルートの話だったが、その時点での進行がごちゃついて整理ができなくなってしまうことも多いので、個人的にはかなり助かりました。
ソムニウムパートについて

ソムニウムパートでは、ABISにある特殊な機械を使って、対象の夢の中に潜り込むことによって、情報を集めていくものになります。
ソムニウムパート中、プレイヤーは人型になったアイボゥを操作しながら、対象の夢の中を歩き回り、行動を行います。夢の世界には多くのオブジェクトが存在しており、それに対して、アイボゥに指示を出すことでアクションを行うことができるようになっています。例えば、目の前のドアを開けるか蹴り飛ばすかなど、プレイヤーは一つ一つ行動を選びつつ、ソムニウム世界の手掛かりを解いていきます。
このソムニウム世界は対象者の夢を表しており、これは対象者の深層心理に密接につながっています。ソムニウム世界を探索していくことで、対象が何を考えているのか、より深い情報や伏線知ることができ、シナリオを深く理解するうえでもこの世界の理解というのは重要なポイントになっていました。
その上、本作のシナリオはソムニウム世界内の行動によって分岐していくものになっているため、ソムニウム世界の探索によって、理解が深まることもあると思います。
ソムニウム世界を探索できる時間は6分と決められています。
上の画像にも残り時間が表示されていますが、プレイヤーは時間内に情報を集めきる必要があり、制限時間を超えてしまうとゲームオーバーになってしまいます。制限時間はそれなりにシビアで、物語終盤の方は初見で一発クリアは難しいものになっていました。そのため、何度もやり直しながらソムニウム世界のクリアを目指すことになります。
この仕様ですが、個人的には良くなかったと考えており、本作における一番の不満点でした。
時間制限という仕様自体は時間配分を考えるという遊びにはなっていたものの、何度もやり直しをさせられる部分のストレスが強かったです。本作はあくまでシナリオ重視のアドベンチャーゲームですので、ユーザーの多くは一番にシナリオを読み進め、謎を解きたいと考えていると思います。関係ないところに複雑な遊びがあるのは単純にめんどくさいと感じました。
そのうえで、探索の楽しみを消してしまっているのも良くないと思います。
ソムニウム世界内は夢の世界ということもあり、関係ない選択肢を試すことで、対象の深層心理を読み解く手がかりになっているものもあったり、ぶっ飛んだ選択肢を試すことでアイボゥとの掛け合いを楽しむことができるなど、隅々まで探索する寄り道の楽しみが表現されていました。
しかし時間制限によって、そういった寄り道をしていると、時間が確実に足りないため、1からやり直しになってしまうのです。
時間制限の仕様自体がストレスになっていただけでなく、本来あるはずの楽しさを消してしまっていたと感じており、筆者自身、終盤の方は攻略サイトなどを見ながら進めてしまいました。この点については惜しかったと言わざる負えません。
その他
動作が重い点はどうしても気になってしまう

本作をプレイしている中で気になったのが、ロードや動作面です。
頻繁にロード画面が挟まったり、別のシーンを挿入するときなどに「フリーズか?」と感じるほどのロード時間が発生するときがありました。シナリオ自体の引き込みがすごく、どんどん読み進めたいときに、10秒程度のロードが挟まったりすると、さすがに没入感がそがれてしまいました。
筆者はswitchでプレイしていたので、他ハードだと問題ないということも考えられますが、さすがに頻度が多く、ここは残念なポイントでした。
レーティングがZである意味を感じなかった
本作に興味を持たれている方であれば、ご存じかもしれませんが、本作のレーティングはZになっています。これは一部グロテスクな表現が含まれることが原因だと思うのですが、個人的にはZにする意味は薄かったように思いました。
猟奇殺人事件をテーマにしている関係上、ある程度レーティングが上がることは仕方がないのですが、そこまで過激表現も多くないですし、Z指定にならない程度の表現に収めた方が良かったのではないかと感じてしまいます。
内容的にギャグ要素も強いため、割といろんな方が楽しめる内容になっているので、Z指定であることで多くおユーザーに触れてもらう機会を狭めてしまっている印象を受けました。
まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『AI:ソムニウムファイル』の評価・レビューをお届けしました。
本作は序盤から張り巡らされた伏線が回収されていくシナリオは圧巻で目が離せないものになっていましたし、3Dアドベンチャーゲームとしての出来も総じて高く、アドベンチャーゲーム好きであればぜひ触れてほしい、そんな作品になっていました。
実は2022年6月23日には続編である『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』が発売されており、本作をプレイしてみて面白いと感じた方は、こちらもプレイしてみてはいかがでしょうか。
