【月姫 -A piece of blue glass moon-】クリアレビュー・評価|ノベルゲーとは思えない。膨大なイラストと圧倒的な演出、シナリオの引き込み方がすごい。しかし、分作商法には賛否が分かれる。

レビュー
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こんにちは。ヤマザキです。

今回は『月姫 -A piece of blue glass moon-』のクリア後の評価・感想・レビューになります。

この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。

※シナリオのネタバレはできる限りしないようにしていますが、気になる方は注意を

この記事はこんな人にオススメ
  • 月姫 -A piece of blue glass moon-』の購入を検討している人
  • 月姫 -A piece of blue glass moon-』の評価・感想が知りたい人
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はじめに

月姫 -A piece of blue glass moon-』は2021年8月26日にTYPE-MOONより発売されたビジュアルノベル作品。
『Fate』シリーズで有名なTYPE-MOONですが、元は同人サークルで本作は2000年にコミマで発売され、異例の売り上げを達成した『月姫』のリメイク作品になっています。

筆者は『Fate』シリーズの大ファンではありましたが、『月姫』に触れたのは今回が初めてでした。
そんな本作ですが、シナリオの圧倒的な引き込みときれいなイラストや演出面での魅せ方がすさまじく、あっという間にトロコンまでプレイしてしまいました。

数多くのノベルゲーをプレイしてきた筆者ですが、「これをプレイしてしまうと、他のノベルゲーはプレイできないな…」と思うほど、全体を通した完成度が高く独自の魅力を持った作品になっていました。
コアな月姫・TYPE-MOONファンはもちろんのこと、これまでノベルゲーをプレイしてこなかった人にこそ触れてほしいそんな本作の魅力を語っていきます。

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ゲーム概要

ストーリー

幼い頃、事故によって大怪我を負った主人公「遠野志貴」は「モノ」の壊れやすい部分を黒い線としてとらえることができる特別な眼を持つようになる。とある女性との出会いに目の力を封じる眼鏡をもらったことで、外見上普通の少年として生活できていた。

そんななか事故以来、遠縁に預けられていた高校生になった志貴は父親の死をきっかけに、名門である実家へ呼び戻される事となる。呼び出された彼を待っていたのは父から当主の座を受け継いだ妹の秋葉、そして二人のメイドだった。巨大な屋敷で新たに始まる日常生活。だが、それはどこか不穏な気配を漂わせていた。

 そんなある日、朦朧とする意識の中ですれ違った一人の女。アルクェイドと名乗るその女との出会いが、志貴を人ならざる者達―――“吸血鬼”による人智を超えた戦いへと巻き込んでいくのだった。

本作の特徴

20年前に同人サークルだったType-Moonが発売した作品「月姫」のリメイク作品

前述した通り、本作は「月姫」のリメイク作品

原作は20年前に当時同人サークルだったTYPE-MOONが作った同人ゲーム。
シナリオ枚数5000枚、グラフィックの総数500枚以上。
作りこまれた世界観やシナリオが話題を呼び、対戦格闘ゲーム『MELTY BLOOD』やアニメ化やマンガ化もされた異例な作品でもあります。

実は本作月姫のリメイクが発表されたのは2008年の話。
発売されたのが、2021年でしたので約13年越しの発売になりました。
ファンにとっては待望の作品です。

まさかの分作。5人いたヒロインのうち2人のルートのみが描かれる

本作はこの作品だけですべてが完結しない分作になります。
原作では「アルクェイド」「シエル」「秋葉」「翡翠」「琥珀」の5人いたヒロインのうち、「アルクェイド」と「シエル」のルートのみが収録されています。

あくまでルートが2ルートのみになっているだけで、途中で物語が終わってしまうということはないので安心してください。加えて作りこみがすごくボリューム面などでの不満はありませんが、本作だけで完結しないことは覚えておいた方が良いでしょう。

選択肢で分岐するオーソドックスなアドベンチャーゲーム

ゲーム性としては選択肢で分岐するオーソドックスなアドベンチャーゲームになっています。
選択肢の数も多く、各分岐で多くの掘り下げがあり、ついつい違う分岐も試してしまいます。

また、バッドエンドの多さも印象的で、1つでも選択肢を間違えると一直線にバッドエンドに。
ただ、「おしえてシエル先生」という反省会的なコーナーが各バッドエンドごとに設置されていて、あえてバッドエンドに進む魅力もありました。

フローチャートはかなり丁寧なものが用意されていて、やり直して他の分岐を試してみることがしやすくなっています。システム面も安定していた印象。

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評価点・良いところ

その1:読み手を引き込むシナリオの魅力

まず触れたいのが、読み手を引き込む圧倒的なシナリオの魅力です。

本作はアルクェイドとシエル、二人のキャラの物語が描かれています。
2人のヒロインを中心に進むルート構成になっています。
一つ一つのルートの作りこみが非常によくされており、それぞれのキャラとの関係とその描き方が丁寧でした。バトルものとして「この後、どうなるんだ!?」という感情を味合わせてくれるのも良いですね。

また、シナリオライターである那須きのこさんが描くシナリオはなんといってもえげつない…
特に最初のあのシーンは、あまりにも衝撃的で引き込まれてしまいました
ネタバレ防止のため詳しいことは言いませんが…

「Fate」シリーズ関連作をプレイしていれば、作品の雰囲気は分かるとは思うのですが、ここまでプレイヤーの予想がつかない展開を描けたのは本当にすごいですよね…

その惹きこみ方はまさに狂気的で、ついつい辞め時を失って、読んでしまうこと間違いなしです。

その2:非常に魅力的なキャラたち

また、何といっても作中の登場する魅力的なキャラとその描き方には注目です
声優やキャラデザも一新されており、より魅力を感じやすくなりました。

簡単に注目キャラをおさらいしてみましょう。

まずはヒロインであるアルクェイドとシエルから。
本作は原作では5人いたヒロインから2人のルートのみが描かれています。

アルクェイドは序盤に主人公と出会い、物語の始まりといえるキャラです
吸血鬼として圧倒的な強さを持っており、無邪気な性格に対してたまに見せる怖さのギャップが印象的で、ノベルゲーながら非常に表情が豊かでなのも良いですよね…

シエルはカレーが大好きな先輩キャラ
個人的に以前(アニメなど)のキャラデザがあまり好きではなかったので、心配していたのですが、本作ではすんなり受け入れられました。
シエルの正体と過去はなかなか重い展開も多いですが、エンディングまできれいに描かれていて、非常に面白かったです。
余談ですが、『ひぐらしのなく頃に』の知恵先生ってこの人がモデルなんですよね…

その他にも主人公の妹である秋葉や遠野家につかえる使用人である琥珀と翡翠など、今回は掘り下げられなかったキャラたちも非常に魅力的に描かれており、「早く彼女らのルートが見てみたい」という気持ちが強くなりました。

その3:圧倒的な枚数のイラストと演出や魅せ方のすごさ

また、本作普通にプレイしているとあまり意識しないのですが、一言で言えばものすごい凝ったものになっています
圧倒的なイラストの枚数とその演出方法、音楽に至るまで魅せ方が研究されていて、一つの物語を見ている感覚にしてくれます

いくつか一般的なノベルゲーとの違いを見てみましょう。
まず、一番に基本の構図の問題。
一般的なノベルゲーは背景×立ち絵で進行していき、見せ場となるシーンでイラストが差し込まれます。基本的に平坦で同じ構造になりやすく、飽きやすい部分もありました。

その構図自体は本作でも変わらないのですが、カットシーンを多用するなど、構図やその出し方が工夫されているため、同じものを見ている感覚にならず、物語にのめり込むことができています
また、文字の位置も従来のノベルゲーの多くが、下のスペースに表示されるものが多いのに対し、本作では画面上部の絵の上から流れきます。これも実はプレイヤーの視線を固定し、没入感を高めている要因になっているように感じました。
また、前述した通り、イラストの枚数多く、ここぞというシーンで出される演出は何よりも記憶に残ります。

こういった魅せ方が本作は突出していて、本作に慣れてしまうと、他のノベルゲーはやりづらくなるかもしれません。

問題点・気になったところ

本作はビジュアルノベルというジャンルの中でも一線を画す作品でその独自の魅力は非常に強いです。
しかしながら、一点だけ首をかしげざる負えない問題がありました

分割商法とその是非

その問題というのが本作の売り方。
一言で言えば「分割商法」です。

前述した通り、原作では5人のヒロインの5つのルートを攻略するものだったのに対し、本作のルートは2つのみ。
それぞれの個別ルートの作りこみはすごく、ボリュームとしても40時間程度。
ボリュームとしてはもちろんのこと、全体を通した満足感としては十分にありましたが、やはり一概に肯定できない部分が強いです。

それは主に以下の2つの部分からです。

追加部分の蛇足観

本作はボリュームとしても十分だったと言いましたが、そのボリュームを稼ぐために原作から加筆が行われています。
筆者は原作を未プレイですが、「どう考えても蛇足じゃない?」と思う部分は多かったです。

一番感じたのが、魅力が薄い新キャラ達
本作では原作から何人かの新キャラが追加されていますが、個人的にはあまり魅力を感じませんでした。
もちろん、後作をプレイして好きになる可能性もありますが、「本作からあえて追加したキャラ」ということを踏まえたときにボリュームを稼ぐための引き伸ばしに見えてしまうのが残念なポイントです

キャラ以外にもそういう部分は散見され、どうしても蛇足観が否めませんでした。

売り方について

筆者は、そもそも分作という行為自体に否定的です。

特にリメイク作品においては元々一つだった作品を分割するので、魅力も分割されてしまう感覚があります
また、次回作がいつ出るか分からず、完結するか分からないというのも大きな部分。
本作も次回作の発表は未だになく、完結する見込みはありません。
実際に8部作で売り出した「Angel Beats!」のゲーム化作品は1つ目以降発売されておらず、そのうち自然消滅となりました。

また、分作にすると上述したような、一つの作品としての満足感を持たせるために引き伸ばすという部分もあり、全体を通してみたときにどこか薄味になっているようにも思います。
実際に「FF7リメイク」もその完成度の高さわりに、分作だからという点で一つの作品としての大きな評価を得れていない印象もあります。

マーケティングとしては人気作を分作で売り出すって都合が良いのかもしれませんが、一つの作品として見たときの質は分作出ない方が良いのではないでしょうか。
個人的に完結した一つの作品としてみたい部分がありますから、次回作の発売目途が立たない作品を分作にしないでほしいというのが正直な気持ちです。

その他知っておいてほしいこと

気になるボリューム面・クリア時間

前述した通り、分作というのは大きな人が気になる部分だと思います。
特に「ボリューム的に少ないのでは?」と思う方が多そうですが、この部分は心配ありません。
筆者はクリア(全ルート)まで35時間ほど
友人やネットの声を調べてみると60時間ほどかかっている人もいます。

中身としても良く作りこまれているため、ボリューム面の心配はいらないと思いますよ。

ビジュアルノベルながらもZ指定

本作はノベルゲーながらCEROレーティングはZ(18歳以上のみ対象)に指定されていて、これはグロテスクな描写が含まれるためです
そういった描写が苦手な方は少し注意が必要かもしれません。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は『月姫 -A piece of blue glass moon-』の評価・感想・レビューをお届けしました。

本作はType-Moon、引き込まれるシナリオと圧巻の演出で他のノベルゲーにはない独自の魅力を生み出せていた作品でした
膨大な数のイラストと演出によって「ノベルゲー」をしている感覚を薄くしており、まるで映画やアニメを見ているような感覚で楽しめます。
普段ノベルゲーをプレイしない人にこそプレイしてほしい作品で、この作品からノベルゲーの魅力に使ってみてほしいです。

文作に関しては個人的に思うところもありますが、次回作を期待して待ちたいと思います。
興味を持たれた方はぜひ購入してみてはいかがでしょうか。