【ペルソナ5 タクティカ】クリアレビュー・評価|なぜシミレーションに…洗練性は高いものの面白さが伴わない惜しい作品

レビュー
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こんにちは。ヤマザキです。

今回は『ペルソナ5 タクティカ』のクリア後の評価・感想・レビューになります。

この記事では本作の良いところや気になったところなど率直なレビューをお届けします。
気になる方は購入の参考にしてみてください。

※シナリオのネタバレはできる限りしないようにしていますが、気になる方は注意を

この記事はこんな人にオススメ!
  • ペルソナ5 タクティカ』の購入を検討している人
  • ペルソナ5 タクティカ』の評価・感想が知りたい人
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『ペルソナ5 タクティカ』の基本情報

タイトルペルソナ5 タクティカ
ジャンルシミレーションRPG
発売日2023年11月17日
発売元アトラス
クリア時間22時間ほど(エンディングまで)
採点67点
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はじめに

本作は2023年11月17日に発売されたシミレーションRPG。
あの超人気作品『ペルソナ5』のスピンオフ作品ということだけあって、ユーザーの期待は発売前からかなり高いものになっていました。
筆者もペルソナ5の大ファンで、本作の発売を楽しみにしていました。

そんな本作の評価ですが、
結論から言って完成度や洗練性は高いもの、シミレーションバトルとしての面白さがあと一歩足りない
そんなもったいない作品だと感じました。

実際、発売から2週間がたった時点でのAmazonレビューの評価(PS5版)は★2.8。
発売してすぐは評価が低くなりがちな傾向にあるので大げさにひどい出来の作品というつもりはありませんし、非常に良く作りこまれた作品だと感じています。
しかしながら、どうしても単調になってしまい飽きやすいゲーム体験は、結果として発売前のユーザーの期待に答えきれていない印象は否めません
原作の『ペルソナ5』やスピンオフ作品の『ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(P5S)』の完成度があまりにも高ったせいで、期待が上がりすぎてしまった点も大きいのですが…

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評価点

その1:ペルソナ5の体験がシミレーションバトルとして表現されている

壁をうまく使いながら戦っていくシステム

本作のジャンルはシミレーションRPG
将棋のように駒を動かしながら戦っていくシステムになっているのですが、これが中々に癖強いです。

操作キャラは3体のみ。壁の使い方がカギを握るゲームシステム

仲間の操作キャラは3体で、攻撃をするまでは一定範囲を自由に動き回ることができます
特徴として壁を使うことが挙げられます。
壁に隣接しているとダメージを減少させてくれる反面、壁がないところに立っている敵や味方に対して攻撃をあてるとクリティカルになり、敵がダウン状態になります。
その場合、1moreが発動し再行動を行うことができます

マリオ&ラビッツのシステムにペルソナ独自の要素を加えたようなイメージで、
いかに壁を使いつつ、1moreで戦況を有利に進めていくことがカギを握るものになっています

これが中々に癖が強いと感じました。
ファイアーエムブレムなどに代表されるシミレーションゲームは基本的に多人数対多人数で行われ、将棋やチェスのように駒を1つ1つずつ進めていきながら、じっくりと戦況を見据える戦略性の奥深さが面白さになっていました。

ここまで流動的に駒を動かすスタイルはなかなかないものだったので、新鮮で楽しむことができましたし、後述しますが、これによって「ペルソナ5」の要素が適応できているようにも感じます。

総攻撃やペルソナ合体など、ペルソナシリーズの要素もうまく生かされている

総攻撃

1moreのほかにもペルソナの要素はあります。

例えば総攻撃はダウン状態の敵を3人で囲んだ場合に発生し、範囲内の敵に大ダメージを与えます。
3人で自由に動き回れる本作の特徴にうまく「ペルソナ5」の要素を適応させた印象で、
この総攻撃はゲームの戦略性を大幅にあげてくれたと思います。
この総攻撃や1moreで何度も動き回るようなペルソナ独自の要素は3人の実を動かすゲーム性でなければ、表現できなかったように思いますし、ここまで違和感なく組み込めているのはすごいと感じました。
他にもバトンタッチなどペルソナ5でおなじみの要素は健在でゲーム性は全く違うものの、ファンであれば楽しめる工夫がなされていたと思います。

またペルソナについては各キャラクターのメインペルソナは固定され、
サブペルソナを自由に合体し、装備できるシステムに変更されています。
装備したサブペルソナは使うスキルの種類を増やし、戦略の幅が広げていました。
バトルに勝利するとランダムでペルソナを獲得し、それをお馴染みのベルベットルームで合体します。
原作ほどではなくとも、理想のペルソナを作るために試行錯誤する楽しみも再現されているのは良いところですね。

クエストはパズルのようにたった一つの正解を模索していくモード

クリアの条件が厳しいクエストモード

本作ではアジトで受けれるクエストというモードが存在するのですが、個人的にはかなり面白かったと思います。本編のゲーム性は1キャラ1キャラが何度も行動できたり、体力が大きい関係で、一手一手の重さはそれほど大きくない印象がありました。

しかし、本モードでは一手でも間違えると詰むほど、クリア方法が限定的で頭を使いパズルをやっているような感覚で楽しむことができます
他のシミレーションゲームでは味わえない感覚だったので、非常に良いと感じました。

ただ、最初のほうは特定クエストをクリアしないとメインシナリオが次に進めない仕様があり、突然理不尽な難易度をさせられている感覚は強かったかも…

その2:あの仲間たちの物語をもう一度見れる

ペルソナ5の後日談を描く物語

本作のあらすじは
卒業式直前のある日、ルブランに集まった面々が見たこともない異世界「キングダム」に飛ばされてしまうところから始まります。
その世界は独裁者によって強いられており、革命軍として反逆する新たな物語になっています。

全体を通してみると、別世界のパレスを攻略していくような内容になっていて良くも悪くもいつもの展開でした
しかしながら、原作のファンとして『ペルソナ5』メンバーの物語が続き、あのメンバーの掛け合いをまた見れたことに対する感動は非常に大きかったです

2人の新キャラの成長が中心に描かれる

新キャラ:エル

そのうえで本作の物語はエルと統志郎、二人の新キャラの成長を中心に描かれています。彼らがどういう問題を抱えていて、怪盗団と過ごす日々の中でどう変わっていくのか二人の心境の変化には必見です。

また、本作は原作同様にムービーシーンに力が入れられていて、胸が熱くなるようなシーンや追感情移入してしまうシーンが多いです。
エンディングまでの流れが非常にきれいで、つい見入ってしまいました
ここぞという場面でここぞという演出を入れてくるのが「さすがペルソナ5」という感じがしますね。

その3:UIや演出面のすごさ

準備画面

また原作同様の「スタイリッシュなUIやオシャレな演出」は健在です。
バトル部分はもちろんのこと、メニュー画面や準備画面、合体の演出など多岐にわたる部分が「ペルソナ5」から踏襲しつつアレンジされており、いつものペルソナらしい没入感を生み出せていました。

シミレーションバトルという全く違うジャンルでここまで違和感なくペルソナらしさを作っているのはひとえにすごいと感じました。

不満点・問題点

その1:どうしても飽きてしまうシミレーションバトルの問題点

シミレーションバトルという枠組みの中にペルソナシステムをうまく組み込んだ本作ですが、問題点もかなり多いです。
その中でも最も深刻な問題が、シミレーションバトルがつまらないことです。

本作のバトルシステムはペルソナのシステムを違和感なく入れ込みつつ、ゲーム性としての面白さをしっかり考えられており、その洗練性は非常に高いものでした。
しかし、面白くはないです…
どうしてもダンジョンを進めていく中で、飽きが来てしまい、後半のほうはかなり苦痛だった印象です。

ここまで作りこまれているにもかかわらず、なぜ本作のシミレーションバトルはつまらないのか。
その原因を考えてみたいと思います。

従来のシミレーションバトルの奥深さがない

風花雪月:動かすキャラの数が多い

本作のシミレーションバトルは一度に動かすキャラが3人で行われる「マリオ&ラビッツ」方式。
ターンの間、プレイヤーは自由に動き回ることができ、これを1moreや総攻撃に絡めて、うまくペルソナのシミレーションバトルを表現できていました。

しかし、これによって従来のシミレーションゲームの楽しさが失われてしまったのではないかと考えています。
ファイアーエムブレムやトライアングルストラテジーなどの同ジャンルのゲームは基本的に多数対多数の戦闘が多く、操作キャラは10人以上いることも多いです。
そのため、一人一人のキャラの役割は小さく、将棋のように一手ずつ戦場の駒を動かしていく感覚や長い時間をかけてゲームを組み立てていく楽しさが魅力になっていると思います。

ただ本作の場合、操作キャラが3体のみ
1moreで一人一人が非常に長く動き回ることができます。
そのため、一人一人の役割が非常に大きく、将棋のような小さな一手一手でゲームを作っていく「戦略的な奥深さ」はなくなってしまっていた印象です。
本作のシステムもこれはこれで楽しさはあるのですが、従来のシミレーションゲームが好きな人が求める楽しさは表現できていなかった印象は否めません。

やはり、3体しか操作できないのはあまり良くなかったかもしれませんね。
かといって、こちらの操作キャラが多いと1moreや総攻撃などのシステムが組み込みづらくなってしまうのですが…

敵キャラが少なく、ギミックが多い

スイッチを押している間だけ、ふすまが開くギミック

本作は敵キャラが非常に少ないです。

行動パターンが違う雑魚キャラは主に4体で、見た目はもちろん、行動パターンも基本同じです。
それが最初のステージから最後のステージ(全50ステージほど)で色違いを含めた同じ敵が出続けます。

正直、これはかなりきつかったです。
前述したように戦略性が従来のシミレーションゲームよりも薄いにも関わらず、同じ敵とずっと体験はずっと同じことをしている感覚を強くしてしまいました

後半になるとギミックが凝っていきステージがどんどん複雑になっていきます
その工夫は良いとしてもあまりにもギミック便りのゲーム性になってしまい、ずっとギミックと戦っている感覚は否めませんでした。
ギミックと戦うシミレーションバトルにはどうしても飽きが来てしまいますよね。

ボス戦のつまらなさ

1対3のボス戦

またボス戦に関しても厳しい印象でした。

従来のシミレーションゲームにおけるボス戦は協力して一体のボスを倒すというよりかは、味方の軍を動かし、敵軍の大将(ボス)を倒すというゲーム性になっているものがほとんどです。
そのため、ボスキャラであっても少し強い駒に過ぎず、何体で囲めば簡単に倒すことができます。
異様に強いボス1体を倒すわけではなく、ボスを含めた陣営と戦うイメージです。

しかし、本作のボス戦は「異様に強いボス1体を倒す」ものなんです。
もうお察しの方もいるかもしれませんが、そこに戦略性などはなく、どうしても退屈になってしまっていました。
もちろん、ここでも飽きさせないためにギミックで工夫はされているのですが、ただめんどくさいものになってしまっていたように思います。

その2:展開が少ないシナリオ

ずっとパレスだけで進むシナリオ

ノベルゲー形式で進むシナリオ

シナリオ面に関しても個人的には期待を上回ったものではありませんでした
本作では、基本ノベルゲー形式の紙芝居で進行していく形になります。

ペルソナ5やペルソナ5Sではパレス攻略とは別に現実世界での仲間たちの日常を追体験していく感覚とその没入感が大きな魅力になっていました。
しかしながら本作では、迷い込んだ異世界のみでシナリオが進んでいくため、一言でいえば「ずっとパレスの中にいる」ようなイメージです。

登場キャラが少なく、解像度が低い

少ない登場キャラ

そして単純に登場キャラが少なく、物語の密度が薄いと感じました。
怪盗団メンバーのほかに固有フェイスが作られているのは大体5人程度です。
魅力的なキャラこそ出てくるもの、本編やP5Sのような深いテーマとしっかりとした描かれ方はされず、どうしても薄味な物語になってしまいました。

過去作のシナリオがの出来があまりにも良かったからこそ、どうしても本作に期待してしまった部分はありました。
それらの作品と比べると明らかに浅い内容になっており、ファンとしては残念です。

その他の雑記

ペルソナ5をプレイしていない人が楽しめる?

結論から言えば、お勧めはできません

本作は物語自体は独立しているものの、原作であるペルソナ5のストーリーを踏まえたうえでのキャラの発言などが多かった印象です。
原作をプレイしていないとキャラへの愛着が持てないかもしれません。

しかしながら、『ペルソナ5』や『ペルソナ5S』ほどシナリオに重きが置かれていないため、気にならない方もいるとは思いますのでこちらも合わせて考えてみてください。

総評

いかがだったでしょうか。今回は『ペルソナ5 タクティカ』の評価・感想・レビューをお届けしました。

本作はペルソナという別ジャンルの作品をシミレーションバトルにするための試行錯誤がうかがえる洗練性の高い作品になっており、作品の完成度は非常に高かったと思います。
実際、最初のほうはペルソナ5のキャラたちを操作しながらシミレーションバトルできる楽しさを十分に感じることができていました。
しかし、シミレーションバトルとしての奥深さに欠けており、ずっと同じことを繰り返していく体験に飽きを感じてしまいました。

物語も非常によくまとまっているものの、それだけを楽しみにするほど力は入っていないため、ペルソナファンに向けた作品としても、シミレーション好きのゲーマーに向けた作品としても中途半端な結果になってしまった点は否めません

シミレーションバトルという新しいジャンルに対するアトラスの挑戦はうかがえたものの『あと一歩足りない惜しい作品』でした。

ご購入を検討する際は、少し注意が必要かもしれませんね。