今回は『サマータイムレンダ Another Horizon』の魅力と、全ルートをクリアして気になったポイントをレビューします。
大きなネタバレは避けていますので、購入を検討している方や、アニメ・漫画を知っていても楽しめるのか気になっている方はぜひ参考にしてみてください。
✓ 『サマータイムレンダ』の物語をゲームで楽しみたい
✓ アニメにはない個別ルートやオリジナル要素が気になる
✓ アニメ・漫画を見たあとでも購入する価値があるのか知りたい
はじめに
『サマータイムレンダ Another Horizon』は2023年1月26日にMAGES.より発売されたアドベンチャーゲームです。
少年ジャンプ+で連載していた人気漫画「サマータイムレンダ」のゲーム化作品になっています。サマータイムレンダのゲーム化作品と聞くと、幅が広いですが、本作を一言で表すのなら「アニメを原作としたノベルゲー」と言えます。
基本的に原作の物語をノベル形式でなぞるものになっていて、原作やアニメでの体験をゲームで味わうことができるものになっています。加えてゲーム独自オリジナル要素もあり、それを楽しみにプレイするのもありかもしれません。
基本情報
| 発売日 | 2023年1月26日 |
|---|---|
| ジャンル | タイムリープADV |
| 開発 / 発売 | MAGES. |
| 対応ハード | Nintendo Switch / PS4 |
| 価格 | 7,700円(税込・DL版) |
| クリア時間 | 約13時間(全ルート・トロコンまで) |
漫画やアニメを知らなくても楽しめる?

この点に関しては全く問題ありません。十分に楽しむことができるでしょう。
前述した通り、アニメ版の内容をベースにしているため、むしろ漫画やアニメを知っている方だと内容が同じで飽きてしまう恐れもあります。漫画やアニメの内容を知らないほうが楽しめるかもしれませんよ!
クリアして感じた率直な評価
結論から言うと、『サマータイムレンダ』という物語自体は非常に面白いものの、ゲーム化作品としてはかなり物足りなさを感じました。
本作のメインストーリーは、基本的にアニメ版の展開をノベルゲーム形式で追体験する内容になっています。そのため、漫画やアニメを知らない方であれば、タイムリープと謎が絡み合う『サマータイムレンダ』の物語を十分に楽しめます。
一方で、すでにアニメを見ている筆者にとっては、同じ物語を静止画中心のADVとしてもう一度見る場面が多く、「ゲームだからこそ遊ぶ価値」が十分に作られていないと感じました。ゲーム独自の個別ルートや新キャラクター、エピローグも用意されていますが、どれも本編の印象を大きく変えるほどの内容ではありません。
原作ファンだからこそ、「せっかくゲームにするのであれば、アニメでは描けなかったキャラクターや物語をもっと掘り下げてほしかった」というのが率直な感想です。そのため本作は、『サマータイムレンダ』を初めて体験する人と、すでにアニメを見ている人とで評価が大きく変わる作品だと思います。
『サマータイムレンダ Another Horizon』の魅力
その1:タイムリープと謎が絡み合う物語が面白い

1つお伝えしたいのが、話としてはめちゃくちゃ面白いんです!
あらすじを簡単に説明しましょう。
本作の主人公の網代慎平は幼馴染・小舟潮の訃報を聞き、葬儀に参列するために2年ぶりに生まれ育った故郷・日都ヶ島(ひとがしま)に戻ることになります。
そこで耳にしたのは、潮の死には不可解な点があり、他殺の可能性があるということ。
潮は亡くなる前に自身と同じ姿の影(ドッペルゲンガー)を目撃しており、島には「自分と同じ姿の影を見たもの死ぬ」という伝承がありました。
潮の死の真相と影とは何なのか、その真相に迫る物語。
本作は次々とひきのある内容が展開されていき、シナリオに目が離せないのです。
潮の死をきっかけに展開していく物語は最初はどことなく悲しさが残る部分もあり、そこから惹かれてしまいました。
また、本作は謎に迫るサスペンス的な展開やタイムリープ要素など多くの要素があるのですが、魅せ方が整理されていて、非常に理解しやすい物語になっています。
正直タイムリープ系の物語としてはかなり名作の部類に当たると思っており、その物語をぜひ自身の手で体験してみてほしいです。
その2:個性的で魅力のあるキャラクターたち

登場キャラも非常に魅力的です。
個人的に触れたいのが、主人公「網代慎平」の幼馴染、小舟潮。
潮の死が物語のきっかけになるわけですが、潮の性格はなかなかに癖が強い…
気が強く、バリバリの方言でしゃべる金髪ロングのヒロイン。
王道ヒロインとは言えない、性格ではあるものの、作品を通して彼女を含めて個性あるキャラたちの存在は大きく、作品を面白くしてくれたと思います。
その3:離島ならではの空気感と舞台の魅力

本作の舞台は和歌山市に実在する離島・友ヶ島をモデルとした、「日都ヶ島」。
作品全体を通して島の風景や暮らしが解像度高く描かれています。島とそこに住む人々を身近に感じられるのも本作の魅力でしょう。きれいな海と離島ならではの風景は作中のシーンと相まって印象に残ること間違いなしです。
また本作の場合、キャラたちが話す方言にも注目したい。
その舞台設定も相まって、登場する人物が話す言葉は少なからず訛りがあります。
それが作品の個性になっていることは間違いないですし、その土地らしさをより感じさせてくれるものになっています。
なかなかここまで特定の地域の雰囲気を作品に取り入れている作品も少ないので、個人的には新鮮に映りました。和歌山県と正式にコラボしていて、聖地巡礼に行ってみても楽しいかもしれません。
公式サイトもあるので気になった方は見に行ってみてください
その4:『サマータイムレンダ』をゲームで体験できる

本作は物語やキャラが非常に面白いことはお伝えしてきましたが、それをゲームで体験できるというのが本作独自の魅力でしょう。
正直、ゲーム体験としてアニメと大きな違いがあるわけではありません。
だからこそ、「アニメや漫画は普段見ないけど、ゲームでならプレイしてみたい」というユーザーにとっては大きなメリットがあるわけです。
サマータイムレンダに入る一つの入り口として検討してみるのは良いかもしれません。
気になったところ・注意点
先ほども述べた通り、本作をひとつのゲームとして見たときの評価は、決して高いものではありません。ここまで挙げてきた魅力の多くも、ゲーム版独自のものというより、『サマータイムレンダ』という作品そのものが持つ魅力です。
本作の一番の問題点はどうしてもアニメの下位互換になってしまっているところです。
いくつかの要素を確認してみます。
その1:ゲーム性が薄く、アニメとの差別化が弱い

サマータイムレンダは漫画が原作の作品でそれをアニメ化し、更にアニメを軸にゲームが作られています。原作がある作品をゲーム化する場合、多くの場合はゲーム性を取り入れるか、オリジナル要素に力を入れるかだと思うのですが、個人的には、どちらも十分な魅力につなげられていないように感じました。
ゲームとしてはオーソドックスな選択肢で分岐していくタイプのアドベンチャーゲームで特筆すべきゲーム性はなく、ノベルゲーに近い内容になっています。ルート分岐としてはアニメをなぞる共通ルートを軸に選択肢によって、バッドエンドや個別ルートに分岐していきます。
そのため、一見多いように見えるCGもそのほとんどがアニメのスクショが使われています。
正確には共通ルートのストーリーの主軸部分はスクショで、個別ルートや分岐後バッドエンドなどのオリジナル要素では新たにCGが作られています。
立ち絵のみになるよりずっと分かりやすいのですが、「じゃあアニメで良くない?」というのが正直なところです。

UI部分などは不満はないのですが、映像で動くアニメをわざわざ紙芝居にしたような印象を受けました。
ゲームだからこそ、アニメでは描かれなかった部分も描かれるということはなく、むしろ割愛されている部分もありました。
漫画原作であるからか、そもそもノベルゲーとしての表現ではうまく伝わってこない部分も多いですし、アクション部分などわざわざ文字にしたことで明らかにだれてしまっている部分が散見されました。後日、該当部分をアニメで見ると違和感なく見れました。
また、ゲーム化するにあたって主人公のボイスは基本的にありません。
一般的に主人公視点の没入感を出したい場合にこのような形がとられることが多いですが、いわばアニメが原作であるこの作品ではないほうが違和感が強いですよね。
その2:オリジナル要素を十分に活かし切れていない
例え、共通ルート部分がアニメの劣化になってしまったとしても、オリジナル要素がしっかりしていれば、ゲームとしての価値は十分にあると思います。
しかしながら、本作はオリジナル要素の魅力がほとんどありません。
むしろ共通ルートのテンポを下げてしまっており、結果として、物語を膨らませるというより、本編のテンポを落とす要素に感じてしまいました。
本作のオリジナル要素は3つあります。
1.個別ルートの追加
2.オリジナルキャラの追加
3.エピローグの追加
それぞれについて解説していきます。
1.共通ルートに影響がない形でバッドエンドを迎える個別ルート

個別ルートに関しては共通ルート中の選択肢によって分岐していくのですが、今作では強制的に進みます。
個別ルートクリア後に新たな選択肢が生まれ、それを選ぶことで共通ルートを進めることができます。
肝心な中身なのですが、一言で表すならマイナーチェンジバッドエンドです。
共通ルート部分の核心には迫らないように、バッドエンドを迎えます。
もちろん個別ルートを語っているので、各キャラごとの見せ場はあるのですが、それを踏まえてもただの尺稼ぎに見えました。
各ルートのプレイ時間は1時間以下で大した中身もない。
しかも強制で挟まれるので、テンポが悪くなり、本筋の物語の邪魔になっています。
もう少し、独立した物語として作りこんで欲しかった。
2.いてもいなくても変わらないオリキャラ

本作には原作には出てこないオリキャラが存在します。
主人公の幼馴染で国民的なアイドルというなかなかの存在感ですが、こちらも微妙です。
魅力こそありますが、もともといなかったキャラを無理やり追加したため、物語上いてもいなくても変わらない立ち位置になっています。
それは仕方がないとしても、前述したとおり個別ルートもさほど作りこまれていないので、これも蛇足でしかないのが残念です。
3.エピローグは内容的には良いが、これだけを楽しみにするには弱い…
本作では特定条件を満たすとエピローグを見ることができます。
このエピローグですが、各キャラの魅力を深堀りするものになっていて面白いです。
ただ、非常に短い…
どれも30分もないくらいボリュームですし、これだけを楽しみに購入する価値はないでしょう。
こういう深堀を個別ルートでやって欲しかったですね。
その3:約13時間というボリュームと価格

本作の筆者のプレイ時間は13時間ほど。
お伝えした通り、基本的にアニメと同じ内容を見つつ、尺稼ぎも含めてこの時間になります。
筆者はサクサク読み進めていくほうなので、もう少し時間はかかるかもしれませんが、少なくともフルプライスの価値がある作品には感じませんでした。
価格に見合った価値があるかは人それぞれだとは思いますが、値段的にも良く検討する必要があるかもしれません。
『サマータイムレンダ Another Horizon』がおすすめな人
アニメや漫画を見たことがない人

何度も言うように内容としては面白いです。
魅力的なキャラたちと目が離せない展開は本作でも楽しむことができます。
MAGES.のゲームということもあってUI面では特に不満もなかったです。
アニメを元に丁寧にゲーム化されているため、こちらでプレイしてもそれなりに楽しめると思います。
アニメや漫画を見たことなければこちらで購入するのもありかもしれません。
アニメでは見られない追加要素まで楽しみたいファン

前述したとおり少ないですが、オリジナル要素はあります。
とんでもなくサマータイムレンダが好きな方であれば、それらを求めて購入するという選択もありでしょう。
まとめ
今回は『サマータイムレンダ Another Horizon』のクリアレビューをお届けしました。
『サマータイムレンダ』そのものの物語は非常に面白く、タイムリープと謎が絡み合う展開や、魅力的なキャラクター、日都ヶ島ならではの空気感は本作でも十分に楽しめます。一方で、ゲーム版のメインストーリーはアニメの内容を追体験する部分が中心で、ゲーム性も比較的薄めです。個別ルートや新キャラクター、エピローグといったオリジナル要素も用意されていますが、筆者としては「ゲームだからこそ体験できる新しいサマータイムレンダ」までには届かなかったと感じました。
特に惜しかったのが個別ルートです。
これだけ魅力的なキャラクターが揃っている作品だからこそ、ゲーム版ならではのIFストーリーやキャラクターの掘り下げがもっと充実していれば、本作ならではの大きな魅力になったと思います。そのため、すでにアニメを見ている方には積極的におすすめしづらい一方、アニメや漫画をまだ見ておらず、『サマータイムレンダ』の物語をゲームから体験したい方には選択肢になる作品です。
原作ファンとしては、物語そのものが面白いからこそ、ゲーム化ならではの魅力をもっと見たかった――そんな惜しさの残る作品でした。













